「連載と単行本というステップがなければ当然、その分の収入もなくなってしまう。僕の場合、『羽州ぼろ鳶組』や『くらまし屋』シリーズは文庫書き下ろし。書くのは早いほうで、例えば『ぼろ鳶組』シリーズは3、4カ月に1冊出していましたが、それでも1年に出せるのは2~4冊くらい。量産できるものではないから、定価700、800円の1冊が図書館でどんどん借りられてしまうと、商売上がったり、というところはありますね」
本を守る方法も一緒に考えてほしい
「たとえば、カーシェアリングってあるけど、あれを国がやったとしたら? 予約さえ取れば、指定した日に行政から車を受け取って2週間くらいタダで借りられるわけですよ。そんなことを始めたら、絶対に自動車業界から猛反発がきますよね」
こうした例を挙げながら、今村氏は「国がきちんと議論の俎上に載せて、お金を出すべきだと思う。さっきのカーシェアリングの例じゃないけど、本を教育的価値の高いものと評価してくれるのなら、それを守る方法も一緒に考えてほしい」と語った。その上で、作家や出版社、取次、書店、図書館が同じテーブルについて議論することが必要なのではないかと述べている。
他にも、図書館をめぐる業界の構造に最も苦しめられている意外な作家の層についてや、直木賞受賞後に全国の書店などに感謝を伝えるため118泊119日で敢行したお礼行脚「まつり旅」、さらには本の未来を憂う今村氏が設立した一般社団法人「ホンミライ」についてまで、90分にわたって応えたインタビュー「図書館への切なるお願い」は、「文藝春秋」2023年4月号(3月10日発売)に掲載されている(「文藝春秋 電子版」では3月9日に公開)。
図書館への切なるお願い