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開成のアイデンティティは「現体制を守り抜く」

武藤敏郎氏 ©文藝春秋

 官僚トップに開成出身が散見されるようになった。

 昨年、経済産業事務次官となった嶋田隆(1978年)も入省時から次官候補と言われ、いまや安倍政権を守るために忠誠を尽くしている。

 大物官僚として、初代財務事務次官の武藤敏郎(1962年)も忘れてはならない。頭のキレは抜群だったが、日銀総裁になり損ねてしまう。いまは、 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長。

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 現体制を守り抜く。そこに開成のアイデンティティがうかがえる。

 開成出身の国会議員は9人、うち自民党8人、希望の党1人。間違っても共産党はいない。立憲民主党もいない。このあたりからも開成神童の堅実性、現状維持メンタリティが見てとれる。

 前出の鈴木憲和はこう話している。

「最近、麻布出身者で政権批判をする人もいますが、自分が目立ちたいだけなんだと思います。開成出身者には、そういう発想はありませんから」(「週刊現代」2017年9月16日号)

 麻布出身の前川喜平、古賀茂明のような造反官僚は絶対に生まれない。それが開成矜持と言いたいのだろうか。

忘れてはならない開成OBのドン

 開成神童の大物を忘れてはならない。

 渡邉恒雄である(旧制中学、1944年)。現在の肩書きは読売新聞グループ本社代表取締役主筆だが、政界フィクサーとしての存在感を示し、永田町、霞ヶ関に大きな影響力を持っている。渡邉は、開成の後輩が総理大臣になることを期待している。渡邉に地味さはつゆほども感じないが、権力欲と、体を張って体制を守る強い意志に、開成OBの水脈を見いだすことができようか。

渡邉恒雄氏 ©文藝春秋

 開成初の総理大臣が誕生したら、ハデな政策をぶち上げず、地味で堅実な政権運営がなされることだろう。

(敬称略)

神童は大人になってどうなったのか

小林 哲夫(著)

太田出版
2017年8月17日 発売

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