しかしラグビーの日本代表をイメージして、新しいグローバル化した日本代表像を模索していた栗山監督にとっては、今回の代表チームの象徴的存在として、どうしても必要な選手だった。
その決断は間違っていなかった。
チームの歓待に母も笑顔「すごく打ち解けているみたいです」
そして早くチームに溶け込めるようにと、チームメイトも歓待した。日本名の「タツジ」から、ニックネームを「たっちゃん」と決めて、3月2日の合流の際には全員が“たっちゃんTシャツ”を着て歓待。
「Tシャツは本当に嬉しかったみたいですし、チームに打ち解けるのは多分、問題なかったと思う。言葉が通じないのが心配でしたけど、『自分が日本語を話すよりチームメイトのみんなが逆に英語で話しかけてきてくれる』って、すごく打ち解けているみたいです」
こう語ったのは母親の久美子さん(57)だった。試合前日の8日に父・チャーリーさん(56)、姉のニコールさんと米・ロサンゼルスから来日。この日は“初代たっちゃん”こと祖父の達治さん、祖母の和子さんとこの試合を生観戦した。
「子供の頃から目上の人をリスペクトすること、時間厳守、そし友達と仲良くすることを教えてきた。昔からああいう子。知らない人と仲良くなるのは得意でした」
そのコミュ力の高さ、明るさが人を惹きつける魅力にもつながっている。
「試合前のセレモニー、これだけの大観衆に囲まれてプレーできたこと。本当に素晴らしい経験になった」
試合後の会見でこう語ったヌートバーは、初回にヒットを放つと、すぐさま胡椒を引く仕草を模した「ペッパーミル・パフォーマンス」を披露。このパフォーマンスは大谷らが真似して、チーム全員の儀式にもなっている。そんな胡椒引きの儀式から、世界一奪回を目指す侍ジャパンの戦いは始まったのである。