今年に入ってから至るところで「大量発生」のニュースを目にする。1月には名古屋市を流れる河川で例年より大規模なボラの遡上が確認されたり、同月の北海道では海岸に数十トンものイワシが打ち上げられるなど話題になった。

 そんな中、釣り界隈でも連日SNSで取り上げられるほど注目度の高い「あの生物」の大量発生が静かに始まった。その正体とは「バチ抜け」だ。

おびただしい数のゴカイ…

 イワシやボラの大群とは比較にならないグロテスクなビジュアル。ニュースになってもおかしくない光景だが、実は多くの釣り人がこの瞬間を待ちわびているのだ。今回は見た目は地獄、釣り人にとってはまさに天国(?)という、釣り界隈のお祭り「バチ抜け」について紹介したい。

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シーバスにとって流しそうめんの食べ放題

 バチとはゴカイやイソメなどの総称。バチ抜けはバチが産卵のため川底の砂泥から浮上して生殖群泳する様が語源となっている。

 釣具店で販売している「イソメ」はチョウセンゴカイと言って中国や韓国から輸入されたものであり、バチ抜けで見られる「ヤマトカワゴカイ」は在来種のゴカイである。

釣具店で買うものと様子が違う…

 ゴカイが川一面にびっしりと流れる様子はまさに地獄……。ではなぜバチ抜けがお祭りとも形容されるほど釣り業界の一大イベントなのか、そこにはメインターゲットであるシーバス(スズキ)の生態系とも関わりがある。

 バチ抜けが始まる1~2月はシーバスが産卵を終えて、痩せた身体に栄養を蓄える時期。ちょうどそこに遊泳力のないバチが上流から流れてくるので、シーバスにとって流しそうめんの食べ放題のようなものだ。当然荒食いが始まる。そんな警戒心の解けたシーバスの捕食に立ち会えた釣り人は、比較的簡単に大物を釣ることができるため、釣り人にとっても「お祭り」と言われている。

後の祭り状態もある…バチ抜けの正確なタイミングとは?

 ちなみに、私が初めてバチ抜けパターンのシーバス釣りを行ったのは10年以上も前になる。当時「お祭り」という甘い言葉に誘われてシーバスを始めてみたが、これがまた釣れないどころかバチ1匹すら見つからなかった。