明るい場所で人に姿を見られる恐怖から抜け出すために
――企業側や社会全体での理解の遅れによる就労困難はもちろん、当事者の方の中でも「諦め」のようなものを感じている方は少なくない、と。
西原 そうなんです、だからこそ「乙女塾」では「昼間の開催」にすごくこだわったんです。いつも土日の昼間に開催しているんですけど。
立ち上げ当初は、当事者の方から「自分のような存在が、昼間に日光の下を歩くのは怖い」と言われることもありました。
ご自身が「まだ女性的に見えない」と自覚のある方だと思うんですけど、「人目の多い土日の昼に街を歩いて、電車に乗って会場まで行くのが怖いから、夜の時間帯にしてほしい」と。
――それくらい、人目に晒されることに恐怖を感じる方もいらっしゃるのですね。
西原 私自身もそうでした。例えば「妖怪人間ベム」の曲の歌詞じゃないですけど、明るい場所で人に姿を見られるのが怖かったです。でも、それだといつまでも夜の世界から抜け出せないなと思って。
――訓練ではないですけど、女性として社会で生きて行くために、少しでも自信を持ってもらって、というところを目指しているわけですね。
西原 そうですね。
マスメディアが「トランスジェンダー」を取り上げることで、生活のしやすさが変わった
――脚本監修、演技指導、支援団体の運営など、西原さんが取り組まれているような活動を通して、少しずつ社会が変わってきているな、と感じられることはありますか?
西原 すごくありますね。やはりテレビや大きな配給映画のようなマスメディアでそういったテーマを取り上げてもらえると、あくまで私の感覚ですが、生活のしやすさが全然変わってくるんです。
特に変わったなと思うのは、これまで「トランスジェンダー」というとバラエティ番組などで「お笑いの対象」として消費されることがほとんどでしたが、作品を通してそういう扱い方が変わってきたな、と。
――どこか「消費される」感覚が少なくなってきたという実感が?
西原 はい。より一般的というか、身近に感じてもらえるような自然な存在に変わり始めているのかなと思います。