「私は女性で、徳川姓でもないので…」
――昨今、相続は社会の大きな話題です。形式とスケールは慶喜家とまったく違いますが。家じまいや墓じまいは多くの人が直面する問題ですね。
山岸 徳川という名前によって、関わる人も多く、各方面への配慮が複雑になっていますが、これは我が家だけの話ではないと思っています。特別に思われがちですが、実は特別ではないとも言えます。
私が向き合っている問題は、家の風習と現代の法律の中間にあり、なかなか理解につながらないという難しさがあります。古い家の風習から見れば、私は女性ですし、徳川姓でもないので、当主として受け入れがたい。しかし時代は令和。現代の法律と向き合うべきだと思っております。
――親族の介護をして看取って葬儀まで出したのに、周囲から認められないというのも、現代的な悩み事です。突き詰めて考えると、誰もが抱える問題に向き合っていらっしゃるとも言えますね。
山岸 そうですよね。女性って、水面下の努力で終わり、報われないところがあります。女がしゃしゃり出てくるなという気持ちもわからなくないのですが、それでも法律上責任を負っているので、やはり責任者として表に出るべきと思いました。私がやらなければ誰もやらない事、きちんと言わなければ伝わりません。
そう思い、SNSやブログが等身大の私への理解に繋がればと願っておりますし、こうしてインタビューを通じて、皆さまにご理解いただければと思っております。やはりこうした取材を受ける事はなかなかに勇気もいるものです。
慶喜家の家じまい、解決の道筋は
――解決の道筋はつきましたか。
山岸 お墓に関しても史料に関しても、様々な方にご協力いただきながら、進めている最中です。現在私が向き合っている慶喜家の家じまいの一連の作業を「家の歴史を日本の歴史にする作業」と呼んでいます。また、6代目の当主は指名せず、私が5代目当主として家を閉じることを決意しました。様々な方との連携を取りながら、慶朝叔父から託された思いを叶えるべく、徳川慶喜家の最後の当主を務めてゆく所存です。
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