1ページ目から読む
4/4ページ目

 それから8年後、2011年に再婚した。現在の夫で、彼女の事務所の社長を務める松山禎秀は、映像制作会社のアシスタントプロデューサーとして杉本と出会い、関係を深めていった。このころにはすでに杉本と当時の夫の関係は冷め切っていた。それでも離婚はしないと頑なだった杉本に松山は、夫と3人で仲良くすればいいじゃないと言って、彼女のマネージャーを務めるようになる。

 ただ、杉本は離婚後、しばらくすると松山と同棲は始めたものの、すぐには再婚しなかった。その理由の一つには、離婚して以来、結婚制度には意味がないと考えるようになっていたことがあった。また、彼のこともパートナーとしてなかなか認められなかった。

©文藝春秋

 そんな彼女が再婚を決めたのは、彼に理不尽きわまりないことをしてしまったのがきっかけだった。杉本いわく「詳しくはお話しできない」ものの、そのときの自分の行為は、あとから思い返すと自己嫌悪で心が折れそうになるほどで、松山に見捨てられてもしかたがないと思ったが、それでも彼はすべてを許して、受け止めてくれたという。

ADVERTISEMENT

 このときの心境の変化について杉本は、《それまでの私って「口先では何とでも言える。行動して証明できなきゃ」って気負ってきた。だから彼を、認めないとも言い続けてきた。でも、このときはもう彼を認めざるをえない状況で。そこで、今まで自分で自分をがんじがらめにしていたんだと気づきました。結局、自分の心の問題だったんですよね》と説明する(『週刊朝日』2016年11月18日号)。

動物愛護活動にも尽力

 再婚と同じくして、東日本大震災を機に生活の拠点も京都に戻した。2014年には「動物環境・福祉協会Eva」を設立し、翌年には公益財団法人として認可される。動物愛護活動にかかわる発端は、30年ほど前に、ドラマの撮影所で瀕死の野良猫の仔を見つけて保護したことだった。

 それ以降も猫を保護する機会が何度もあり、しだいに動物とかかわることが増えるなかで、ペット流通のあり方など問題の根源になっているものを解決しなくては何もならないと考えるようになったという。2018年には、動物虐待厳罰化の請願署名活動を展開し、約25万人分の署名を集め、これが翌年の改正動物愛護管理法の成立を後押しした。

杉本彩と愛猫 ©文藝春秋

 動物愛護は、杉本にとっては演技を必要としない唯一の公の活動なのかもしれない。それでも昨年のインタビューでは、《私の中には、まだ、マグマのようにふつふつと燃えているエロスの塊があるはず。今は、それが噴火するのを待っています》と予告めいた発言もしている(『週刊大衆』前掲号)。

 彼女は13年前の著書のなかで《年齢を重ねることは素晴らしいことだ。四十歳を過ぎた現在でも、心からそう思っている。というより、年を重ねれば重ねるほど、「年をとる」素晴らしさを実感できるようになった》とつづっていたが(『リベラルライフ』)、その後さらに人生経験を重ね、50代半ばになったいま、女優としてもどんな新たな表現を見せてくれるのか、気になるところだ。