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 小田急線の湘南台駅は、地上にホームを置く。改札口は地下にあり、相鉄や地下鉄は地下ホーム。地下のコンコースを辿って駅の東西のどちらかに出られるというしつらえである。地下コンコースは広場になっていて、音楽の演奏会のようなものも開かれている、ちょっとした憩いの場になっているようだ。

 

人の流れに乗っかって西口に出ると…

 人の流れになんとなく乗っかって、西口に出る。地上に出ると、湘南台駅西口は大都市郊外にあるそれなりの規模の駅前としてはまったく必要充分といった雰囲気の駅前風景であった。

 ドトールコーヒーがいちばん目立つところにあるし、コンビニ、居酒屋、チェーンのファーストフード、パチンコ屋。駅前からまっすぐ西に向かって大きな道も延びている。

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 湘南台という駅の存在は、新たに東京直結の終着駅になったということ以上に、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの最寄り駅という点で膾炙しているといっていい。最寄り駅といっても歩いて行けるような場所ではなく、だいたいバスを使う。

 駅前からは盛んに慶應大学へのバスが出て、逆にバスが到着するたびに学生とおぼしき若い人たちが吐き出されてくる。つまり、三田や日吉と同じく慶應生たちの集まる学生街、というのが湘南台駅のひとつの顔なのだ。

 ただ、学生街らしさという点ではいささか活気に欠けるような気もする。もちろん、学生が好みそうなものはひととおりあるといえばある。が、一般的にイメージされる、たとえばごちゃごちゃと雑多でいくらか猥雑さもはらんでいるような、そういう学生街とは違う。むしろ、郊外のベッドタウンの駅前というほうがふさわしく、実に整然とした町である。

 

 駅前の小さな繁華街エリアを抜けていくと、すぐにのどかな住宅地へと町並みは移る。駅前の大通りを西に歩いてゆくと、ほどなく急な下り坂。その先には、引地川という小さな川が流れている。川の流れは周りの土地を削り取って谷を作る。駅前からの下り坂は、引地川が作った河谷に降りる坂なのだろう。