本体価格以外の「諸費用」をめぐる曖昧な基準
それ以降もいくつか中古車店をまわったが、これほどネット表記と見積もりがかけ離れるケースはなく、上乗せされたとしても、管轄外のナンバー登録にかかる手数料として2万円~3万円程度で済むことがほとんどだった。
なぜこれほど、ネット表示価格と実際の価格に差が出るケースがあるのか。そこには車両本体価格以外の「諸費用」をめぐる、店舗ごとの考え方の違いがあるらしい。商談した個人経営の中古車店で、代表が内情を語ってくれた。
「実際のところ、売る側としてもネットに出す価格をどうするかの判断は難しいんですよね。基本的に、どの店でも法定費用や登録手続きにかかる費用は計上しているはずですが、安く見せるために納車前の軽整備や清掃などの費用を含めずに表示している店もあります。
こういう『法定費用ではないけど、納車するなら普通はやるよね』という部分で、店舗ごとに考え方の違いが出ているんだと思います。ある店は消耗品の交換まで含めた価格を表示しているのに、別の店はいわゆる『現状渡し』の価格を表示しているわけです」(個人経営中古車店代表A氏)
わざわざ「支払総額」と「車両本体価格」を分けて記載しているのに、「支払総額」からさらに必要経費が加算される、というのは消費者にとって納得しがたい話である。
これは中古車業界においても大いに問題視されており、実際に2023年10月からは自動車公正競争規約および同施行規則が改正され、不当な価格表示が禁じられる見込みである。
これまで支払総額のうち車両本体価格以外の「諸費用」は、「保険料、税金、登録等に伴う費用」を指しており、それ以外の整備費用や点検費用などについては諸費用のうちに含める義務がなかった。上の話でいえば、「普通はやる部分」を「上乗せ分」にできてしまうがゆえに、この点を抜け道として利用する業者も散見されたわけである。
しかし今回の改正以降は、納車にあたって最低限必要となる点検や、オイル・バッテリー交換などの軽整備、クリーニングなどの代金については、あらかじめ「車両本体価格」に含めるものとされ、これらを後から上乗せすることは禁じられる。つまり、原則として「表示価格=乗り出し価格」になるようにしなければならないのである(消費者が自由に選択できるオプションや、管轄外地域への納車手数料など状況に左右される要素は除く)。
2023年10月以降は、消費者側としても中古車の見積もりに「納車手数料」「納車準備料」「洗車・クリーニング料」などの費用が計上されていないかを確認することが必須になりそうだ。