世間を仰天させた保険金不正請求問題を皮切りに、ビッグモーターの悪質な手口の数々が白日の下に晒されている。業界2位のネクステージにも不正疑惑がもちあがり、「中古車業界の闇」が続々と暴き出されている格好だ。

 相次ぐ中古車業界のスキャンダルに、「どこも同じようなことをやっているのでは」と疑う消費者も多いだろう。もともとリスクの高いイメージのあった中古車だが、もはやそのリスクは「動かぬ事実」として定着してしまった感がある。とはいえ、予算や納期の都合上、中古車を選ばざるをえない人も多いはずだ。筆者もまたその一人であり、昨年中古の軽自動車を購入するまでに、業界に横行する悪質な手口を垣間見ることもあった。

 中古車を探す際、安心して店や車両を選ぶにはどうしたらよいのか。ここでは筆者の体験も交えつつ、規模や形態のさまざまな中古車販売店のスタッフから話を聞くなかで得られた「中古車選びのヒント」を紹介していく。

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ネット記載価格から25万円以上の上乗せ

 中古車の商談におけるトラブルとして、しばしば報告されるのが「ネット上に提示している価格と実際の見積価格が違う」というケースである。実際に、筆者も最初に訪れたビッグモーターの店舗でこれに直面することになる。

 ネット上で見つけたのは、「車両本体価格:44.9万円、支払総額:56万円」という車両。本体価格に11万円程度の費用が上乗せされているが、登録手続きなどに要するコストとしては標準的だろう。

中古車情報サイト上に掲載されていた車両情報

 異なる県の在庫だったので、陸送費をプラスして60万円程度になることを予想しつつ、最寄りの店舗で見積もりを出してもらった。

 10分ほどして提示されたのは、82.8万円という数字だった。目を疑うが、どうやらミスではなさそうである。ネット上の表記とは異なり、車両本体価格に対して付加費用が25万円以上加算されているのだ。

実店舗で提示された見積書。ネット表記価格の約1.5倍の値段に

 ネット価格とかけ離れていることに言及すると、スタッフは「他の店舗の在庫なので、そのぶん費用が加算されてしまうんですよね」という。しかし、費用の内訳を見ても、それに該当する項目は「他店在庫販売手数料」の2万円弱のみであり、これが費用増加の主たる原因でないことは明らかだ。

見積書の詳細。頼んでもいない保証やコーティングが費用を大きく増加させている

 増加分としてまず目につくのは、保証とコーティングでそれぞれ6万円程度が加算されていることである。聞くと、コーティングは任意だが、保証については「基本的には、みなさんに加入してもらっています」という答えが返ってきた。言葉は穏やかだが、なにやら断りにくい圧を感じ、購入意欲がみるみる削がれていく。

 細かく諸費用を見ていくと、自宅への納車費用など不要な項目も多い。しかし、任意で削れるものを引いても、総額71万円ほどとなり、ネットの記載とはほど遠い。

 ここでそもそも、車両本体価格が見積もり書類では「49.9万円」と、ネット表記よりも5万円上乗せされていることに気づく。確認すると、しばらく席を外したのち、「ネットで価格を更新できていなかったので、正しくはこちらの価格です」と返ってきた。さすがに商談を続ける気が失せて、「検討します」と店を後にする。

 中古車選びにおいて「相場よりも明らかに安い車両には注意」というのは鉄則だが、上のように「安いネット価格で来店を促し、実店舗で価格をつり上げる手口」も横行しているようである。