片減りの主な原因としては、ホイールの位置や角度のズレ(アライメントの狂い)が挙げられる。これは走行を重ねることで多少は生じるものだが、極端な片減りを引き起こすほどの狂いは、事故の衝撃によって引き起こされている可能性もある。車体全体のダメージを見きわめるためにも、タイヤの確認は重要なのだ。
気まずくてもなるべく裏側までチェックを
ここまで中古車の状態を見分けるためのポイントを見てきたが、これらは車両状態を知るためのごく基本的な観点に過ぎない。限られた時間のうちにすべてのリスクを見通すことは難しく、車に精通した人間であっても「しばらく走らせてみないとわからない」という部分は多い。
ただ、どの箇所をチェックするにあたっても、リスクを軽減するために大切なのは「なるべく裏側まで見る意識」だという。
「とくにサビや腐食などは、普段は目のいかない部分で進行していきます。どの業者も目につく部分はキレイに繕う一方で、隠れた部分は放置したままにしている業者も少なくありません。
なので車体であれば、できる限り下回りを覗き込んでみるといいでしょう。とくに雪国で使われていた車は、融雪剤の影響で下回りにサビが進行しているケースが多いです。
内装でも、トランクの裏側でサビが進行していたり、シートレールに水没の痕跡が残されていたりすることもあります。『めくれるところはめくる』『覗けるところは覗く』くらいの気持ちでいるといいかもしれません」(同前)
車体の隅々までチェックすることを、「面倒な客だと思われたくない」とためらう人も多いだろう。しかし数十万円ないしは数百万円を支払い、場合によっては命にも関わりかねない商品を買うのだから、確認のために相応の手間と時間をかけるのは当然ともいえる。
「運まかせ」ではない中古車選びのために
中古車の程度は車両によって異なり、同じ年式・同じ走行距離であっても、それまでの使われ方によって調子に大きな差が出ることもある。購入後に生じる故障のリスクを見通すことは、専門家であっても困難であり、「運まかせ」の部分はどうしても残ってしまう。
だからこそ、中古車を買う際には保証やアフターサポートを重視しておきたい。「売って終わり」ではない中古車店を見つけることが大切だが、購入時点でトラブル対応のありようを知ることはなかなか難しいだろう。
車両状態を知るうえでも、店としての姿勢を知るうえでも、中古車を買うときには担当スタッフとのコミュニケーションが重要だ。車両について色々と質問してみて、それらによどみなく答えてくれるのなら、そのスタッフは1台1台の状態をしっかり把握しているのだと推測できる。また保証制度や見積もり内容について、あいまいな言葉で濁したりせず丁寧に説明してくれるかどうかも重要だ。なるべく根気よく、納得して取引できる相手を探していきたい。
なお、前編で触れた筆者自身の中古車選びだが、諸々検討した結果、走行距離10万キロのアルトを総額37万円で購入した。上の話とは矛盾するようだが、保証の充実した店で買うほど余裕はないし、どうせ運の要素が絡むなら、初期費用がなるべく安く済むものにしようと考えたのである。「安物買いの銭失い」の典型となる覚悟で購入したが、購入から1年以上が経った現在のところは、いたって快調に走っている。