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 長女の妊娠にあたり、出演予定だった舞台『大奥』シリーズを降板したり、初の主演ドラマ『上海タイフーン』(NHK)が制作無期延期になるなど、ブレイク真っ只中の妊娠だったがゆえに仕事への影響は大きかった。

本人インスタグラムより

 それでも朝のお弁当作りや洗濯など家事を全面的に引き受ける優しい夫のサポートもあり、無事女優に復帰。出産後初の主演映画『ぐるりのこと。』では第51回ブルーリボン賞主演女優賞、第32回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など6つの映画各賞を総なめにした。

 ところが試写会では、自身の出産で制作スケジュールが遅れた事情にわざわざ自分から触れ、関係各位に謝罪したという。その謙虚で誠実な人柄が改めてファンを増やした。

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性欲に取り憑かれる23人の男を翻弄する“稀代の魔性の女”

 高い評価は日本国内にとどまらず、2010年には、CNNの“まだ世界的に名前は売れていないが、演技力のある日本の俳優7人”に選出されている。

 だがなんといっても、女優・木村多江の圧倒的な存在感を世に知らしめたのは2010年公開の映画『東京島』だろう。

「東京島」では窪塚洋介や福士誠治を翻弄 予告編より

 1945~1950年にマリアナ諸島のアナタハン島で起きた実話をモチーフに桐野夏生が創作した同名小説を映画化したこの作品で、木村は乗っていた船が嵐にあい、無人島に漂着する難しい役を演じた。無人島では23人の男性がたった1人の女性である木村をめぐって男性同士の激しいバトルを繰り広げる。

 “幸薄い女”の異名は、陰のある独特のセクシーさの裏返しである。木村のその魅力が無人島で“稀代の魔性の女”として開花し、その木村を巡って性欲に取り憑かれる男たちの欲望に強烈な説得力を持たせているのだ。

 “幸薄い”という唯一無二の個性と、その陰から香り立つ蠱惑的なセクシーさ。さらに『マイホームヒーロー』の記者会見では「小さい頃、毎日飛び蹴りの練習をしていました」と天然発言で共演の佐々木蔵之介やなにわ男子の高橋恭平らを驚かせていた。“薄幸”と“天然”というギャップもつい期待してしまう。