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ゼロコロナ政策中、ネットを使わない人に厳しい対処がとられていたが…

 ところで、中国でインターネットはどれくらい普及しているのでしょう。中国で最も権威のある統計データなどを発表している「CNNIC」によると、「2023年6月末時点で、中国のネットユーザー数は10億7900万人、普及率は76.4%」となっていました。一時期より伸びは鈍化していますが、2022年12月比で1100万人くらい増えているので、大した数字です。

電車内のスマホ利用率は日本以上に高い

 でも4人に3人がネットを使っているということは、4人に1人が使っていないということになります。つまり、4人に1人が先日の僕と同じくらいの不便さを感じているということです。

 中国のゼロコロナ政策中、ネットを使わない人には厳しすぎる対処がとられていました。バスや地下鉄に乗るだけでも、「健康コード」というQRコードで、非感染エリアだけを通った証拠を見せなければならなかったのです。スマホ未所持の高齢者がバスに乗ったら、バスが動かないといったニュースがよく報じられました。

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 そうした問題を解決するために、スマホが使えない1人暮らしの高齢者には、ボランティアが訪問して、生活でスマホを使えるようにサポートするという取り組みが行われました。

 今はゼロコロナ政策が機能していないので、健康コードは不要となり、高齢者がバスや地下鉄を利用する際は、敬老パスカードをピッとかざせば格安で乗れるようになっています。中国では、ニュースや動画を利用する高齢者が多くなり、最近はEC利用者も増えたといいます。

中国の都市部でも、貧しい地域ではスマートフォンを使わない人たちもいた

外国人が単なる旅行で行くにはあまりにも不便で肩身が狭い

 一方で、外国人観光客に対するサポート体制は手薄なので、極めて不便に感じました。問題だと感じたのは、イベントの入場時や移動など、ちょっとした場面で外国人のネットサービス利用を想定してない設計になっていることでした。

 日本の特定非営利活動法人「言論NPO」と、中国の海外向け出版発行機関「中国国際伝播集団」による共同世論調査で、中国に行きたくないと回答した日本人が過去最多となったそうです。その理由は、中国の若者が、福島第一原発の処理水海洋放出に対して日本にイタ電をしたり、中国で日本企業の社員がスパイ容疑で逮捕されたりというのが大きいのかなと思います。でも僕にとっては、自国民だけが便利になった中国のサイバー社会が、外国人が単なる旅行で行くにはあまりにも不便で肩身が狭いので、今はそれが、積極的に行こうと思わない理由になっています。

写真=山谷剛史