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 打ち合わせが終わり、席に着き、焦って書き始めようとするぼくを、鈴木さんはたしなめました。

「すぐに、パソコンに向かって仕事をするな」

 パソコンに向かってキーボードを打ち始めると、なんとなく仕事をしている気になってしまう。気がつくと、数時間同じ文章を書いたり消したりして、一日がすぎてしまうからです。

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その4:まず、手で書き出す

 文章を書くときは、まず、ノートを開き、短い文章で、「何を書くか」を並べてみます。このときのコツは、「仮」でいいので、起承転結の「結」=結論を先に書いておくことです。でも、それに縛られる必要はありません。

 次に、その結論へ向けて、想定される読者にとって、身近と思われる「枕」を考えます。「枕」を置かずに、いきなり「起」から書き始めると、どうしても文章が大上段になってしまう。「枕」で読み手の頭をほぐしておいて、「起」で本題に入ります。

 鈴木さんの文章は、とても簡潔です。文節が短く、一つひとつの言葉がシンプルで、形容詞はほとんど使いません。一文がコピーのようで、無駄がない。

 もちろん、これが正解ということはありません。ただ、編集者として、プロデューサーとして、自己表現の手段ではなく、「人に伝える文章」を極めた鈴木さんが至った、ある境地なのだと思います。