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祖母の死

 2019年5月。夫の勧めで精神科を受診すると、金山さんはADHDと広汎性発達障害と診断された。

「成人してから、自分にも両親にもいろいろ思い当たることがあり、『私は発達障害かもしれない』と思っていました。夫から指摘されるのは嫌でしたが、診断されて、受け入れてしまった後は、あまり気にならなくなりました。私は人より仕事を覚えたり慣れたりするまでに時間がかかるので、頑張りすぎて疲れたり、ストレスが溜まったりしていたのだと思います」

 先に夫が読んでいた共依存に関する書籍などを読み漁り、母親が「自己愛性パーソナリティ障害」ではないかと思い至った。自分も母親のようになっていたことに気付いた金山さんは、主治医や心理士に相談し、自分と向き合うために、月1でカウンセリングに通い始めた。

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 父親の死からしばらく経った後、金山さんは弟に「うちの両親って性格悪かったよね?」と問いかけると、「姉ちゃん今頃気付いたの? だから俺はリビングに行かなかったんだよ」と言われ、「私は家族の仲を取り持とうと思って頑張ってたのに……」と愕然とした。

 2021年9月には、98歳になっていた祖母が、心不全で亡くなった。

「私は高校生の頃まで、母の悪口を父と一緒に言っていた祖母があまり好きではありませんでした。『母のほうがいじめられている』『母の味方にならなきゃ』と思っていたのです。嫁である母がだらしがなく、言うことを聞かない分、幼い私への躾けが厳しくなったようにも思いますが、私も家庭を持ち、片付けが苦手で家事も不器用ですが、祖母のおかげで料理だけは、子どもを育てるのに困らないくらいできています」

 意外にも金山さんは、子どもの頃は祖母が好きではなかった。子どもにとって母親の存在は、それほど大きく、唯一無二であるということだろう。

 実家を出てからも祖母は、「ここがお前の実家だから、いつでも帰ってきて良いんだよ」と優しく声を掛けてくれ、亡くなる前は、「3人の子育ても家事も、よく頑張ってやってるな」と労ってくれた。

「夫のおかげで、祖母に愛されて育ったことに気付くことができました。夫には救われてばかりです。夫に話を聞いてもらって、やっと自分を“かわいそうな子どもだった”と肯定できました。夫がいなければ、いつまでも共依存に苦しんでいたかと思うと、本当に怖いです」