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「母に何を言われるかが怖くて、脅迫的に実家へ通っていた」優しい夫を持った娘に嫉妬…40代女性が“毒母”との共依存関係に気づくまで

『毒母は連鎖する 子どもを「所有物扱い」する母親たち』#1

2023/12/28
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 母親は、金山さんが祖母の見舞いに実家に帰省すると、待ってましたとばかりに金山さんに祖母や父親の愚痴を聞かせた。

「母は私のことを、自分より優しい夫を持った娘、仕事をしていなくても夫や義父に許されている娘と思っており、嫉妬攻撃もしんどかったです。自分を棚に上げて、『掃除や片付けができないあんたはダメな嫁だ』『母親失格だ』などと言って貶めて、私が体調不良なときや、片付けが下手な私を気遣って手伝ってくれる夫に対してイライラしていました」

 おそらく母親は、近所の人たちに監視されながら祖母の在宅介護をしなくてはならない自分の境遇を呪い、溜まったストレスを金山さんにぶつけていたのだろう。祖母が心臓の手術を受けたのは、親族で話し合って決めたことなのに、帰省する度に、「あんたのせいでおばあさんが長生きして、私が苦労をさせられる」と文句を言われた。

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 長男が1歳になる年、「そろそろ看護師の仕事を再開しよう」と思って保育園を決め、新しい職場で働き始めた矢先、金山さんは関節の痛みに襲われる。病院を受診したところ、関節リウマチと橋本病を発症していた。

「関節リウマチと橋本病の原因は、まだ完全には解明されていないそうですが、細菌やウイルスの感染、過労やストレス、喫煙、出産や怪我などをきっかけに発症することがあると言われています。発症の原因は複合的だとは思いますが、私の場合、育った環境に関係ないとは言い切れないと思っています」

 悪いことは重なる。長男がひどい中耳炎を起こし、入院してしまったのだ。金山さんは看護師に復帰したばかりだったため、職場に「休みたい」と言い出せない。代わりに夫が育休を取り、対応することにした。

「夫に、『俺が育休を取って長男の面倒見るから』と言われたとき、私は『なんで休むの? 仕事していてほしいのに!』と言って夫に当たり散らしました。夫は、『病気なんだから無理しなくていいよ、頑張らなくていいよ』と言ってくれたのに、母には関節リウマチや橋本病で体調が悪いことを理解されず、『ダンナに育休取らせるなんて! 男は外で働かせなきゃダメだろう!』と罵倒されるため、自分があまりにも不甲斐なく思えて、素直に夫の優しさを受け取れませんでした……」

 夫は、家事と6歳と5歳の子どもたちの世話に加え、中耳炎で入院中の3歳の長男の面会もあり、3ヶ月の育休後、自律神経失調症を患ったが、約3ヶ月後に仕事に復帰。結局金山さんは、看護師の仕事を退職した。