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「それから、俺たちは、ネタを作らなくなった」あの島田紳助、渡辺正行も“敗北”を宣言…お笑い界のヒエラルキーを破壊した「超天才コンビ」の正体

『関東芸人のリーダー』より #4

2024/01/03
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 芸人というものは、同じ舞台に立てば、先輩だろうが後輩だろうが、そこは勝負の場となる。

 そして、観客の反応によって、自分たちが勝ったかどうか、だいたい分かるものだ。

 そのとき、俺は、小宮と石井と一緒に舞台袖にいたのだが、ダウンタウンの漫才を見ながら味わったのは、完全なる敗北感である。

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 それは、観客の反応だけではなく、ネタに対しても言えることだった。

「まだ全国的に無名だけど、売れるな」

 どれも秀逸で、新しい発想によって作られていた。

「へー、こういう発想の漫才があるのか……。」

 ただただ驚くしかなかった。

 たとえば、80年代初期の漫才ブームを彩った先輩の漫才師たちのネタは、確かに素晴らしかった。人気を得たのも当然だった。

 ただ、俺としては、発想は理解できた。

 俺たちは、テクニックや実力では、漫才ブームの人たちに勝てないけど、発想なら勝てる。そういう思いは、強くあった。

 さらに、漫才ブームにおける大阪の漫才と言えば、パワーで勝負するイメージが強かった。

 ザ・ぼんちやのりお・よしおがその典型だろう。

 紳助・竜介は、当時の大阪では珍しく、発想やセンスのよさを打ち出していたコンビだったが、パワーもしっかりと備えていた。