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芸人というものは、同じ舞台に立てば、先輩だろうが後輩だろうが、そこは勝負の場となる。
そして、観客の反応によって、自分たちが勝ったかどうか、だいたい分かるものだ。
そのとき、俺は、小宮と石井と一緒に舞台袖にいたのだが、ダウンタウンの漫才を見ながら味わったのは、完全なる敗北感である。
それは、観客の反応だけではなく、ネタに対しても言えることだった。
「まだ全国的に無名だけど、売れるな」
どれも秀逸で、新しい発想によって作られていた。
「へー、こういう発想の漫才があるのか……。」
ただただ驚くしかなかった。
たとえば、80年代初期の漫才ブームを彩った先輩の漫才師たちのネタは、確かに素晴らしかった。人気を得たのも当然だった。
ただ、俺としては、発想は理解できた。
俺たちは、テクニックや実力では、漫才ブームの人たちに勝てないけど、発想なら勝てる。そういう思いは、強くあった。
さらに、漫才ブームにおける大阪の漫才と言えば、パワーで勝負するイメージが強かった。
ザ・ぼんちやのりお・よしおがその典型だろう。
紳助・竜介は、当時の大阪では珍しく、発想やセンスのよさを打ち出していたコンビだったが、パワーもしっかりと備えていた。