そして、意外に思われるかもしれないが、とても「安全」で「安心」できる場所である。飛田新地で犯罪がまったく起きていないとまではいえないが、飛田新地料理組合の自主的な管理努力もあって、治安は比較的安定している。
この街で傷害事件、誘拐事件、窃盗事件など人々の安全が侵されるような事件はあまり起きない。なぜなら、「ものを盗まれたり怪我をしたりするような危険な場所だ」となったら客は来ないからだ。組合によって値段が統一されているので、基本的に明朗会計で、ボッタクリはない。値下げ交渉は、ほぼ無理である。
商売繁盛のために、飛田新地は常に「安全で安心できる場所」である必要がある。だから、一般の歓楽街以上に治安がよく、秩序が保たれている。休業や時短営業など国や地域に順応することによって「ちょんの間の街=危ない場所」というイメージを払拭し、「非日常感あふれる異界」に対する人々の不安を取り除いているのである。
外国人旅行者が注目する「TOBITA」の情景
現在の飛田新地は観光地化している。増えてきたのは物見高い外国人の姿だ。中国、韓国などの近隣諸国をはじめ、アメリカ、ドイツ、フランスといった諸外国から観光客がやってくる。街のなかをカメラを持って平然と歩いている。
団体でやってくる外国人客の姿もある。飛田新地に向かう飛田本通商店街(動物園前一番街)で中国語で楽しげに会話する集団を何度も目にした。昼間の新地内では3人の韓国人男性が楽しげに女の子を見て回っていた。
彼らは口々に「来てよかった。日本の素晴らしさを感じた。ぜひ、また来たい」「日本の歴史をいまに伝える文化遺産として、日本はこれを誇るべきだ。世界で認めるべきだ」と飛田新地の情景を称賛する。飛田新地を「古い時代の日本の伝統文化を伝える場」として捉えているようだ。
いま、「TOBITA」の名は世界中に轟いている。実際、新地内には英語表記のマップや外貨両替機があり、外国人観光客の出入りが激しいことがわかる。
また、子ども連れの日本人ファミリーもいる。歴史的な文化遺産を見物に来た観光客のような感覚で、社会見学や歴史探訪として小学生ほどの子どもを連れてきている。