「銀タキ」とは、タキ43000形式というタンク貨車の中で、1両だけあるステンレス鋼無塗装の車両(タキ143645号車)のこと。全体が銀色に輝いているので「銀タキ」と呼ばれているそうだ。数ある同形式車両の中でなぜこの1両だけが無塗装なのか、記者はそちらの方面には疎いのでよくわからないのだが、いずれにしても珍しい車両らしい。
「ああっ! いたいた!」
石井さんが指さす上り210列車の中に、たしかに銀色に輝くタンク車がつながれていた。
さっきはタキ1000の1000号機を見て、今度は“銀タキ”を見た。「珍しいもの繋がり」で、もしかしたら野うさぎも見られるかもしれない。
我々の列車を待っていた210列車は、3分後の15時16分に発車して行ったが、このあともう1本、京葉久保田駅を14時25分に出発した千葉貨物駅行き上り506列車が15時23分に、ここ浜五井駅に着く予定だ。わが509列車はその到着を待って出発するため、当駅で22分間という長時間停車のダイヤが組まれている。
「ということで、どうぞ」
と、石井さんからペットボトル入りのお茶が、我々取材チームと鈴木機関士に配られた。よもや貨物列車の機関車の運転室でお茶をご馳走になるとは思わなかった。石井さんの心遣いに感謝し、我々はほんのひと時、運転室でのティータイムを楽しんだのだった。
「反応灯、ヨシ!」確認を確実に行う姿に人知れず感動する
15時35分。浜五井駅を出発。すぐ先に養老川を渡る200メートルほどの鉄橋がある。石井さんによると、開業当初の京葉臨海鉄道臨海本線の終点が浜五井駅だったのは、この養老川に鉄橋をかけるのに手間取ったから、という説があるとのこと。
15時39分に玉前(たまさき)駅、15時42分に甲子(きのえね)駅を定刻通過。甲子駅の先で、大阪国際石油精製の専用線が右に分岐していく。この専用線に入っていくには、機関車も自動車と同じように「構内走行許可証」を前面窓に掲出しなければならない決まりになっている。それだけではない。構内で入換作業に従事する係員は、保護メガネや静電靴の着用など、遵守すべきルールがある。当然我々取材班が立ち入ることはできない。本線から右の茂みに分かれていく専用線を、羨ましそうな目線で見送る。
鈴木機関士が涼やかな声を挙げる。
「反応灯、ヨシ!」