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京葉臨海鉄道の貨物列車に乗り込み…体験して実感した「昭和のディーゼル機関車」の特徴とは

京葉臨海鉄道・貨物列車添乗ルポ #2

2024/04/17
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 反応灯とは、踏切の遮断機が下りていることを示す「×」の形をした表示灯のこと。石井さんによると、臨海本線全線で踏切の数は55カ所。そのうち38カ所が千葉貨物駅から京葉久保田駅までの間に存在するとのこと。つまり、鈴木機関士は片道だけで38回にわたって「反応灯、ヨシ!」を指差喚呼することになるのだが、そのすべてを丁寧に行っていた。インタビューで話していた「確認を確実に行う」という言葉通りの行動に、記者は人知れず感動するのだった。

線路の左側に踏切の遮断機が下りていることを示す「×」の形をした反応灯がある

 正面前方に、こちら向きで停車中の貨物列車が見えてきた。前川駅に停車中の上り508列車だ。これは我々の1本前に千葉貨物駅を出発した507列車の戻り便。ということは、運転しているのはさっき運転点呼をしていた吉井機関士だ。表情だけでも見えるかな、と思って注意していたが、先方はこちらに背を向けて運転しているので、ご尊顔を拝することはできなかった。それでも、知っている人と本線上ですれ違うというのは仲間意識が湧いて気分のいいものだ。心で敬礼をしてすれ違う。

前川駅では、行き違う「上り508列車」が我々の到着を待っていてくれた

16時15分、定刻で停車。

 前川駅に15時48分に到着したわが509列車は、ここでも12分間の停車。この駅のすぐ先にある「出光4号踏切」は、出光興産の出入り口に設けられた踏切で、車用と歩行者用合わせて12本の遮断機が備え付けられている。多くの遮断機が立ち上がっている姿は壮観だが、我々が通過するときは竿は下がっているので、あまりどうということもなく通過してしまった。

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 しばらく平坦なところを走る。このあたりは国道16号線と工場のあいだの緑地帯のような、比較的広いところに線路が引かれている。のどかな雰囲気だ。野うさぎも出て来るならいまだ、と思うのだが出てこない。

 16時06分に椎津駅、16時09分に北袖分岐を通過した。ここからは富士石油への専用線が分岐する。そしてこれが臨海本線から分岐する最後の専用線だ。

専用線は、右側に向けて分岐していった(北袖分岐)

 千葉貨物駅を出発してここまで1本の支線と3本の専用線がすべて右側、つまり海側に向けて分岐して行った。支線とか専用線を愛してやまない記者は、進行方向右側の暗がりに向けて消えていくその線路に、限りない哀愁を感じていたのだが、いよいよ今度はわが509列車が「右側」に姿を消すときが訪れた。

 北袖駅を出たわが列車は、しばらく国道16号線と並走した後、突如意を決したかのように右急カーブを切っていく。これまで幾度も見送って来た支線や専用線と同じような茂みの小道にKD60は頭を突っ込んでいく。そして向きを90度変え、北北西に進路を取ると、視界が開けて前方に終着京葉久保田駅が見えてくる。この旅もいよいよ終わりだ。

国道16号と離れ、右急カーブを切る509列車。運転室から後方を見るとこんな感じ