指差し確認をしながら幾本もの線路を渡り、時に停車中の貨物列車を乗り越えて、目指す509列車に辿り着いたのは14時50分。7両のコンテナ車を従えたマリンブルーのディーゼル機関車、KD60の3号機に乗り込む。先ほどインタビューに応じてくれた鈴木機関士が笑顔で招き入れてくれる。
初体験! ディーゼル機関車の運転室内は…
京葉臨海鉄道に所属するディーゼル機関車はいずれも凸型機関車と言って、車両の中心に運転席があり、機関士は進行方向に向かって横向きに座って運転する形をとる。前に行くにも後に行くにも、いちいち運転席を移動しなくていいという利点があり、駅構内での入れ替え作業には便利だが、突き出したボンネットで機関車のすぐ近くや運転席と反対側が見えづらいという弱点もある。同社ではそれを補う目的で、機関士から死角になる箇所にカメラを据え付け、モニターで確認できる工夫が施されている。
記者は凸型機関車、というよりそもそもディーゼル機関車の運転室に乗り込むのは初体験なのでワクワクする。想像通り運転室は狭い。千葉貨物駅から南方を向いたとき、進行方向左側に運転席があり、ここに鈴木機関士が座る。前面のパネルに向かって座るその姿は、パイプオルガンを奏でるオルガン奏者のようで、崇高さが漂う。
一方、反対側の1畳半ほどのスペースには、山元カメラマンと石井さん、稲垣さん、それに記者の4人がひしめく構図となった。
じつはこちら側にも座席が一つあるのだが、なぜかこういう時はみんなが遠慮してそこに座ろうとしない。誰かが座ればその分スペースも空くのだが、全員がその座席を無いものとして振舞うので余計に混み合う。そんな妙な一団を乗せた京葉臨海鉄道臨海本線下り第509列車は、定刻通り14時58分、汽笛一声千葉貨物駅を出発したのだった。
走り出すKD60
地の底から力が沸き上がるような独特の音を立ててKD60の3号機は走り出した。
いくつものポイントを渡って千葉貨物駅構内を出ようとすると、正面に見える建物を指して石井さんが言った。
「あれが当社の千葉倉庫営業所です。コンテナの積替ステーション的な役割もあって、まだ数は少ないもののコンテナの出荷もあります」
石油以外の輸送量を高める営業努力が喫緊の課題なのだろう。