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未解決事件を追う

<BOACスチュワーデス殺人事件>警察は自殺と判断したが…「2日間で少なくとも2人の男性と性的接触が」遺体を調べてわかった“大きな誤り”

<BOACスチュワーデス殺人事件>警察は自殺と判断したが…「2日間で少なくとも2人の男性と性的接触が」遺体を調べてわかった“大きな誤り”

『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』より#1

2024/04/30

genre : ライフ, 読書, 社会

note

 当時の首相は岸信介。戦後最長の政権に就き、銃撃された安倍晋三・元首相の祖父にあたる人だ。岸は翌年、安保改定をめぐる大混乱の責任を取り辞任する。

 海外に目を転じれば、アメリカの49番目の州として正式にアラスカが合衆国入りしたのもこの年であった。

 日本の街では、けたたましい音を響かせてオートバイで走り回る「カミナリ族」が出現したのがこの年であった。私の兄はまさにカミナリ族のはしりで、まわりから顰蹙を買っていたものだった。

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 民間のテレビ局は日本テレビ、TBSに続きフジテレビも開局されたけれど、一般庶民にまでテレビは普及されておらず、せいぜい街頭テレビぐらい、まだまだラジオが主流を占めていた。当時ラジオから流れていたのは、ペギー葉山「南国土佐を後にして」、フランク永井と松尾和子のデュエット曲「東京ナイト・クラブ」、さらに水原弘の「黒い花びら」などの流行歌である。

 高度経済成長のさなかにあって、スポーツは国民的娯楽であった。大相撲は栃錦と初代若乃花の両横綱がほぼ交互に優勝を競う「栃若時代」で、黄金時代を迎えていた。プロ野球界では長嶋茂雄がデビュー2年目で首位打者を獲得。天覧試合でのサヨナラホームランで、国民的スターの座に上り詰めた。高校球界では四国の西条高校が甲子園で日本一となり、さらに実業団(都市対抗)野球では丸善石油(松山市)が優勝。「南国土佐~」の歌と相まって四国ブームとなったのも昭和34年のことであった。

 だが、何と言ってもこの年の特筆すべきことは、皇太子(現上皇)と美智子妃殿下(現上皇后)のご成婚であろう。初の民間出身の妃殿下としてミッチーブーム(美智子さまの愛称より)が巻き起こり、4月10日の祝賀パレードは約53万人の見物人を集めたという。このパレード見たさにテレビの普及が一気に進み、NHKの受信契約は200万件を突破した。

 そしてこのご成婚の1か月前に、BOACスチュワーデス殺人が起きたのだった。

当初は自殺とされた被害者

 当初、被害者の武川知子さんは自殺と認定された。検視の結果、体に乱暴された跡がなかったからだという。