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 FXなどの投資商品にハマってしまうのはエリートやそれに近いサラリーマンに多いのですが、この事件もそうだったといえます。

 この元社員は灘中、灘高から東大に入り、大学院まで進んでから伊藤忠商事に入社していたようです。しかも30代の若さで海外の関連会社に出向して、個人の裁量で多額の資金を動かせる地位に就いていたそうです。

 ギャンブル依存症に詳しくない人からみれば、エリートと呼ばれる人たちはこの病気にはもっとも縁がない存在に感じられるかもしれません。

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 しかし、「病的賭博者100人の臨床的実態」をまとめた森山成彬先生も、ギャンブル依存症は「他の依存症にくらべて高学歴の人が多く、大学卒以上が42%」になると話しています。

 本当はエリートだろうと注意が必要なのに、本人は自分が依存症になっていることを自覚しにくく、周囲もそれを警戒しにくいというところに“罠”があります。

FXのおそろしさ

 この事件では、元社員が横領した7億円がほとんど残っていなかったというのも注目すべきところです。

 立場や収入から比較すれば、大王製紙の井川さんの106億8000万円に匹敵するか、それ以上の意味を持つ金額だともいえそうです。

 金融庁ではFXの倍率を25倍までに制限していますが、元社員は、海外業者を利用することでその制限を外し、数百倍の取引をしていたそうです。

 いちどギャンブル依存症を発症すると、思考という抑止力が働かなくなり、道徳心が失われていきます。そういう障害が脳に起きてくるので歯止めが利かなくなるのです。

©AFLO

 規模の大小はあっても、他の大手企業や銀行でも同様の事件が起きています。

 一見するとギャンブルとは無縁のようなエリートも、いつレールを踏み外してしまうかはわからないということです。

 私の身近でも、FXにハマって2か月で800万円の借金をつくったプログラマーがいました。

 その人の場合も過去にもギャンブルで借金をつくったことがありましたが、他のギャンブルにくらべても、FXに投入するお金はあっという間に大きくなっていきました。

 投資する額が大きければ、期待する額も大きくなります。そこでドーパミンも過剰に反応するようになると考えられます。FXや株にハマったサラリーマンが1000万円レベルの借金をつくってしまうと、自分ではどうにもならなくなります。そのため、横領などの犯罪にも手を出してしまうようになります。