修学旅行のお小遣いも
桐島さんは、修学旅行の積立金は支払われたものの、お小遣いを渡してもらえず、お土産屋さんでポツンとしていたので1000円をこっそり手渡した経緯がある。作田くんに支払った額よりもだいぶ少なかったので、つい気が大きくなってしまったような気もする。
しかし、他の子と一緒に活動をする作田くんと桐島さんがうれしそうだから、ミカ先生も不満はあるものの、仕方ないなと思っている。でも、2人の保護者には正直なところ腹が立ったりする。
給食費はもちろんミカ先生も支払っている。味はおいしいのでその点はいいのだが、健康が気になり始めたミカ先生からすると、もう少し野菜を増やしてほしいと思っている。だけれど文句はいえない。忙しいのでいつも3分くらいで飲み込むように食べる。
学級文庫の書籍
給食後の昼休み。子どもたちはそれぞれ好きに過ごすが、2組の子どもたちは「ミカ先生の学級文庫」が好きな子が多い。学校の図書室には入っていないようなおすすめの本をミカ先生が用意してくれているのだ。新しい本や話題の本もあるし、図書室の本よりきれいで競争率が低いので、本好きの子どもたちが群れを成す。
珍しく、今日は、6年1組の子たちが2組の教室を廊下からのぞき込んでいる。「2組ばっかり本がたくさんあってずるい」と1組の子たちが騒ぎだしてしまった。すぐに駆けつけて、「1組の子も借りていいんだよー。ここのノートに名前と借りる本の名前を書いてね」と声をかけたが、結局1組の子たちは文句をいいながら出て行ってしまった。
つまり本を読みたいというより、2組だけずるい、という気持ちが先行していたようだ。やれやれ、とため息をつきながら、ミカ先生は「1組の先生に謝らないといけないな」と思う。これでは、勝手に「シールシステム」を始めた岸川先生に文句はいえない。
修学旅行の下見費用
そこに教頭の吉井先生が暗い顔でやってきた。
「すみません。前に行ってもらった修学旅行の下見なんですけど、やっぱり学年の先生全員分は旅費が出せないんです」