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“意外なスポーツ”が危険因子になることも…専門医が教える「認知症予防」5つのポイント

『認知症医療革命 新規アルツハイマー病治療薬の実力』より #2

2024/06/28
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認知症予防策1 生活習慣病を予防・治療する

 アルツハイマー病や脳血管性認知症は喫煙、肥満、糖尿病や高血圧などから引き起こされる病気、すなわち生活習慣病との関連が強いことがわかっています。

 生活習慣病は脳の血管を傷めます。脳の血管が傷めば、脳血管性認知症を発症するリスクが高まるのは言うまでもありません。アルツハイマー病も同じです。脳の血管が傷めばアミロイドβ(※)が排出されにくくなり、その結果、脳に蓄積し、アルツハイマー病の発症リスクが高まるのです。

※ アルツハイマー病を引き起こす原因物質のひとつ

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 生活習慣病の予防や治療は、確実に認知症の予防につながります。特に、中年期からの高血圧、肥満の治療は重要です。もちろん禁煙の必要は説明するまでもありません。

 一方、高齢者では過度な血圧の治療は、脳の血のめぐりを悪くするため、かえって認知機能が下がってしまう恐れもありますので、主治医との十分な相談が必要です。

『認知症医療革命』(伊東大介 著、扶桑社新書)

認知症予防策2 適度な運動

 数ある認知症予防策の中で、最もはっきりした科学的根拠を持っているのが適度な運動です。体と脳は別と思われるかもしれませんが、そもそも体を動かせるのは脳が機能しているからにほかなりません。運動をして体を動かすことは、脳を刺激する最適な方法なのです。

 腰や関節など、体を支え、動かす器官である運動器に疾患(腰痛、変形性関節症など)があると生活の幅が狭まります。さらに認知症を発症すると多くの場合、急激に症状が進行してしまいます。

 運動が認知症予防に効果的といっても高齢者の場合、整形外科的な疾患や呼吸循環器の疾患により十分な運動ができない人もいらっしゃいます。そこで私は、厚生労働省が運営する健康情報サイト「e‐ヘルスネット」の「糖尿病を改善するための運動」を参考に、下記のような運動をおすすめしています。

運動種目: ウォーキング(早歩き)、ジョギング、水泳など全身を動かす有酸素運動。

運動頻度:できれば毎日。少なくとも週に3回以上。

運動時間:1回当たり20~60分。

 高齢者の場合は、万歩計で1日5000から9000歩を目安にしてください。きちんと栄養を取った上で、筋肉づくりなどの運動習慣を身につけ、体のメンテナンスを行ってください。