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「どんな育ちをしたって、100歳になればひとりぼっちですよ」佐藤愛子が“わがままに生きる”理由【草笛光子で映画化】

佐藤愛子さんインタビュー

2024/06/25
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 怖いってことはないです、泥棒の方が怖がりますから(笑)。怖いことはないけど、非常に孤独ですよね。夜より昼間ね、誰ともしゃべらないでしょ。お手伝いさんはいるけれど、あちらはあちらで働いていますしね。2階の娘や孫とはそんなにしゃべることもないし、向こうもそれほど2階から降りてきません。

 100歳の孤独というのは、育ち方には関係ありません。どんな育ちをしたって、100歳になればひとりぼっちですよ。受け入れるしかないですね。だって、「あなた、そんな生活してたら寂しいから、少し協調性を持ってやりなさいよ」と言われても、できないものはしょうがないですから。

 孤独と折り合うということはできません。できないから、踏ん張って受け止めている。耳が聞こえないのを怒ったってしょうがないでしょ。だから聞こえるフリをして生きるという。その程度の苦労は、してるんですよ。

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娘の響子さん(中央)と夫の田畑麦彦さん(右) ©︎文藝春秋

 書く力がある時は、孤独などどうでもよかったんです。ところが書くことができなくなってきたの。書いても、読み返すと気に入らないしね。原稿用紙は机の上で真っ白なまま。仕事ができれば1人は最高のことなんですけど、できないから。そうすると、することがない。だから早く死にたいなと、思います。

『九十歳。何がめでたい』が映画化、主演は草笛光子さん

 17年に年間ベストセラー1位になったエッセイ『九十歳。何がめでたい』が映画になり、6月に全国公開される。佐藤さん役を演じるのは、草笛光子さん。

 あんなものを映画にしたって、面白くもなんともないですよ。草笛さんとは何十年も前に、一度対談しました。その時が初対面でしたが、ここまでしゃべっていいのかなというくらい、別れた芥川也寸志さんの悪口の連発でした(笑)。私より10歳下ですよ。

 今回出ていただくので、また1回だけ会いました。一昨年、帯状疱疹で寝たきりみたいになって、足が弱りましたが、その前でしたので出かけていって一緒に食事をしたんです。足が弱って寂しくなりました。来ていただく以外、ないですから。

 映画の予告動画を見ると、現実の佐藤さん宅にそっくりな光景が映る。庭を眺めるゆったりした椅子も、アンティーク調の電話も……。

 松竹の人がここに来て、いろいろ写真を撮っていましたから。この椅子はできあいのものですから、いくらでも売っているんじゃないですかね。電話は下北沢を散歩してた時に見かけて、面白いから買ったのね。