――家庭環境の変化によって成育環境が変わっているということですね。
石井 親が多忙ゆえに、子どもに向き合うための十分な時間がないということも大きいでしょう。
別の例でいえば、3歳、4歳になっても、固形物をちゃんと食べられない子が出てきているそうです。食べ方がわからなので、のどに詰まらせてしまう。
そのため、保育園によっては、3歳児なのにペースト状の離乳食みたいなものを食べさせているところすらあります。誤嚥事故を防ぐためです。
なぜ、こんなことが起こるのか。先生が指摘するのが親の多忙さです。通常、ミルクから離乳食、そして固形物を食べれらるようにするためには、親が何カ月もつきっきりで向き合い、日に2~3回「あーん」「はい、もぐもぐ」「ゴックン」などと言って食べ方を教えてあげなければなりません。でも、親が疲れきっていたり、スマホやドラマを見ながら食事をするのが習慣になっていたりすれば、それを十分にしないので固形物を食べる方法が身につかない。それで、柔らかなものでも、のどにつまらせてしまそうです。
本書のタイトルに「スマホ育児」とついていますが、これはあくまで象徴的なことをタイトルに入れただけで、いろんな子どもたちの環境の変化から生じる問題を描いたノンフィクションと考えていただければと思います。
公園に連れて行っても遊べない子どもたち…
――今の子どもたちが外で自由に遊ぶ機会が減ったため、保育士が公園へ連れて行って「遊んでいいよ」と言っても、遊べない子が出てきているというエピソードがショッキングでした。
石井 自由な遊びは、子どもの体力を鍛えるだけでなく、非認知能力のベースを育むものです。そこで想定外のことをたくさん経験し、大勢の人たちとかかわることで、自尊感情、勇気、優しさ、意志、対人能力などを鍛えていく。
これをしっかり理解して自由な遊びをさせている家庭と、そうでない家庭とが、今ははっきりしています。後者だと遊びを通じて獲得する能力がなかなか育ちません。
親の中には、子どもの遊びを保育士に任せようとする人もいますが、そう簡単にいきません。今の若い保育士はデジタルネイティブです。本にも書きましたが、保育士自身がゲームとスマホで育って、外遊びをしたことがない人が珍しくない。「裸足で土を踏めない保育士」「泥を触れない保育士」「他の人とご飯が食べられない保育士」などが出てきている。
そうなると、保育園に任せれば万事OKという神話は崩れますよね。
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