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〈現状では、クラウドや検索サイト、オンライン会議等のプラットフォームのほとんどをアマゾンやグーグルといった外国企業が提供しています〉

〈皆さんのスマホ環境を振り返れば容易に想像できるように、日本の企業活動や日々の私生活においてデジタル化が進展すればするほど、「デジタル赤字」が拡大する構造となっています〉

神田前財務官の執務室には大量の資料が ©文藝春秋

深刻な「デジタル赤字」に対策はあるのか?

 懇談会では、「エネルギー分野の赤字は解決策が思いつくが、デジタル赤字の拡大は解決策が見えない不安がある」との声まであがったという深刻な問題だが、対応策はあるのか。神田氏はこう綴る。

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〈もちろん、日本として、自前の技術も活用した国産デジタルプラットフォームの育成に取り組むことが期待されるところです。ただし、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどがデファクトスタンダードとなったいま、日本版プラットフォームを短期的に実現することは容易ではありません。次々世代を視野にいれたチャレンジに開発努力を傾注しつつ、当面は、海外事業者によるデジタルサービスを活用する際に、付加価値の高い製品・サービスを生み出して、日本の産業全体の競争力を向上させるといった視点が重要でしょう〉

「デジタル赤字」にとどまらず、海外から日本への対内直接投資残高(対GDP比)が、国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計で198カ国・地域中196位と、北朝鮮より下位に沈んでいる現状など、日本経済が抱える数多くの課題を指摘。それに対する様々な「処方箋」を示しつつ、〈改革を着実に実施し、市場経済のダイナミズムを強化すれば、競争力のある日本経済を取り戻すことは十分可能です〉と結んでいる。

 神田氏の論考「日本はまだ闘える」は8月9日発売の「文藝春秋」9月号に掲載されるほか、「文藝春秋 電子版」(8月8日配信)で公開中だ。