――チームの結束力の強さが伝わってくるエピソードですね。

小池 そこは監督の凄みだと思います。言葉の強さと、純粋さと、圧倒的なクリエイティビティと。それこそバスケのようなチームのキャプテンとしての存在感をとっても、見事なまでに“監督”だったと思います。

“The Birthday”と“10-FEET”、アーティストの芯の強さ

――先ほどTAKUMAさんのお名前も上がりましたが、小池さんのクレジットは「音楽プロデューサー」ですので、音楽に関するエピソードもぜひ伺いたいのですが。

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小池 「この作品の最初の感動は、湘北のメンバーが動いていること。そこを大切にしたい」と監督が話していたことをよく思い出すのですが、The Birthdayのオープニング主題歌「LOVE ROCKETS」が流れる、あのオープニング映像は、まさに監督の言葉そのものでした。

 普通に考えたら、あのシーンをYouTubeにでも上げれば、めちゃくちゃ強い宣伝になりそうなのですが、オープニング主題歌が流れている大切なカットを出せるわけがない。ですので、今でもそういう使い方はしていません。

 でも、The Birthdayチームのみなさんも、そこをすごく理解してくださいました。タイアップとして音楽が使われて認知が広がって、みたいなキャリアの積み方をしていなかった、彼ら本来のアーティストとしてのスタンスも大きかったと思います。

 自分は音楽業界からの転職組だから殊更に思うのですが、主題歌を映画の宣伝にどんどん使って欲しいと思うのが普通の考え方なのに、こんな風に作品を理解して頂けたのはとてもありがたかったです。

 これは10-FEETについても同じです。結成から25年もの歳月で、ライブを重ねながらお客さんとの信頼関係を築き、彼らが開催している「京都大作戦」という音楽フェスでは“鞍馬ノ間”というバスケに特化したステージを設け、本作以前からバスケとの関係性も築いてきた。The Birthdayにも10-FEETも、あらかじめタイアップや映画の主題歌といった要素に左右されない芯の強さを備えていた。だからこそ、この作品と通じるものがあったのではないでしょうか。

“The Birthday”チバユウスケの「おもしれえじゃん」

©︎石川啓次/文藝春秋

――The Birthdayのヴォーカル、チバユウスケさんは、惜しくも2023年11月にこの世を去ってしまいました。今、思い出されるやり取りはありますか?

小池 監督と一緒に、最初に主題歌のオファーを持ってThe Birthdayのみなさんにお会いしたときですね。メンバーのみなさんの前で、監督がシーンの説明を一通りして、幾つかの会話を重ねた辺りで、チバさんが、「おもしれえじゃん」と返されたんですよ。

 その後、チバさんが2022年に上梓した単行本(『EVE OF DESTRUCTION』)を読むと、〈「カッコいいな」、「おもしろいな」っていうのが俺にとっての“ロック”なんだ。〉といった記述があった。それを読んだとき、あくまで僕個人の思いですが、「おもしろい」と思ってもらえてよかった、この作品の音楽はロックでよかったと、心から思いました。