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ヒャダインが語る「日テレ=豊臣秀吉」論とは

ヒャダイン×てれびのスキマ「日本テレビのえげつない勝ち方」#2

常勝の日テレが抱く危機感とは

ヒャダイン 今だからあの時期があって良かったなんて言えるんですけど……後出しジャンケンという感じはするんです。でも間違いなく必要だった時期だったなと。とっとと成功しなくて良かったなというのは毎日思っていますね。とっとと成功したら、ほんと有頂天になるし、鼻も高くなるし、リスクヘッジも考えない。過信、慢心にも繋がっていたと思うので、ご飯が食べられなかった時期があるというのは、助かりますよね。だから日テレもその時期があるから、全然まだ腹ぺこでいられると思うんです。

©深野未季/文藝春秋

戸部田 やっぱり日テレは苦しんだ時期が長いからそうなるんですね。土屋さん(敏男、『電波少年』など)も「うちがなんでいま、勝っているかっていうと、丁寧にやっているから」だとおっしゃっていました。夜のうちにちゃんと筆を入れて、いつ行ってもペンキが剥がれているところがないディズニーランドみたいなことやっていると。それはやっぱり、フジにずーっと負けていたのがエネルギーの源泉だって。

ヒャダイン 問題は最近入ってきた人ですよね。上昇気流に乗ってから入ってきた人たち。AKB48とかもそうですよね。一期目、二期目というのは、ビラを配っていた時からいる。でもミリオンを出してから入ってきた子というのは、お茶の間的には認知されにくい。ハングリーさが違うというのはあると思うので。なので、日テレはそこらへんの教育はどうするんだろう。獅子の子を崖から落とすのかなというのを思って、見ていますね。

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戸部田 そうですね。そういう危機感は取材した日テレの方々みなさんお持ちでした。

©深野未季/文藝春秋

ヒャダイン 『新春テレビ放談』でカットされたかもしれないですけど、僕とテレ東の伊藤さんと(千原)ジュニアさんで話していたことなんですけど、テレ東も日テレと似た状況じゃないですか。もともとテレ東はお金がなかったところからやったから、ランニング・半パンでも、どこでも走り回れる。でもフジは高いコートを着て、あったかい恰好をしていたから、ちょっと寒くなったら、きつくなる。そういう状況なのかなということをおっしゃっていて。日テレもいまこんなに勝っているのに、ランニング・半パン。いまだに倹約的であることというのは、もしかしたら意図的なのかもしれないですね。(第3回につづく[5月19日公開予定])

 

『全部やれ。』を書くきっかけとなった対談「“テレビっ子”ヒャダインが語るテレビのこと」
http://bunshun.jp/articles/-/1236
http://bunshun.jp/articles/-/1237
http://bunshun.jp/articles/-/1238

 

ヒャダイン/前山田健一。1980年、大阪生まれ。3歳の時にピアノを始め音楽キャリアをスタート。京都大学を卒業後、2007年より本格的な音楽活動を開始。ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学やでんぱ組.incなど様々なアーティストへ楽曲提供を行う。自身も『PON!』(日本テレビ)などTV、ラジオレギュラー多数。

戸部田誠/1978年生まれ。2015年にいわき市から上京。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。お笑い、格闘技、ドラマなどを愛する、テレビっ子ライター。『週刊文春』『週刊SPA!』『水道橋博士のメルマ旬報』などで連載中。新刊は日テレがいかに絶対王者フジテレビを逆転できたのかを描いた『全部やれ。』、主な著書に『笑福亭鶴瓶論』、『1989年のテレビっ子』など。

全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方

戸部田誠(てれびのスキマ)(著)

文藝春秋
2018年5月11日 発売

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