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子どもを父親に任せ、新たな恋の道へ

子どもたちが四六時中シルバーバックのそばにいるようになると、母親はもう子どもを構うことをしなくなる。傍目ではどの子の母親かわからなくなるほど、子どもとは疎遠になる。

子育ては母親から父親へとあっさりバトンタッチされるのだ。やがて次の子どもを身ごもるメスもいるし、他のオスについて群れを離れるメスもいる。その際は決して子どもを連れていかない。もう子育てから卒業して、子どもは父親にすっかり任せ、自分は新たな恋の道へといった風情だ。

子どもたちは思春期まで父親を頼って育ち、やがて娘も息子も群れを離れていく。とくに娘は思春期になると父親を避ける傾向がある。これも実にあっさりと旅立つ。このいさぎよさは人間も見習っていいのではないかと思う。

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人間の赤ちゃんとゴリラの赤ちゃんの違い

ゴリラからみると、人間はとても不思議な子どもの成長と子育ての特徴を持っている。ゴリラの赤ちゃんは平均体重1.6kgで生まれてくるが、人間の赤ちゃんは3kgを超える。ゴリラの赤ちゃんが3年間お乳を吸うのに対し、人間の赤ちゃんは1歳前後で離乳してしまう。

これらの特徴から人間の赤ちゃんは成長して生まれてくるのかと思えば、ゴリラよりずっと成長が遅い。しかも、ゴリラの赤ちゃんは離乳するときにすでに永久歯が生えているのに対し、人間の赤ちゃんは6歳になってやっと永久歯が生える。それまでの間、華奢な乳歯で硬いものが食べられない。

今でこそ人工的な柔らかい食物があったり、調理できるので離乳食には事欠かないが、農耕や牧畜が始まるまで親たちは特別な離乳食を見つけてこなければならなかったはずである。なぜそんなコストをかけてまで、離乳を早め、重たい赤ちゃんを産むのだろうか。

人類が多産で生後急速に成長する理由

それは、人類が進化の初期に類人猿の棲む熱帯雨林を離れ、樹木のない草原へと進出したことに起因する。熱帯雨林は年中食物が絶えず、安全な場所である。草原へ出ると乾季が長くなって食物が不足する。人類が最初に身につけた独自の特徴は直立二足歩行で、分散した食物を集めて仲間のもとへ持って帰るために発達したと考えられる。