長らく続いた不動産バブルが崩壊し、今世紀最大の分岐点を迎えた中国。不動産さえ買えば誰もが富裕層になれた“チャイニーズドリーム”は、もはや存在しない。世界を翻弄する大国はどこに向かうのか。

 ここでは、梶谷懐氏、高口康太氏による新刊『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)を一部抜粋、加筆編集して公開する。(全2回の2回目/前編を読む

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 平凡な人間であっても、大都市に不動産さえ買っておけば一財産を築ける。そんな「チャイニーズドリーム」の時代が終焉してしまった。この後、中国の人々はどのような夢を見るのか。その答えは「海外」にある……。

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両親が子ども夫婦のマンションを購入

 中国では結婚にあたり、新郎の両親がマンションを購入するという文化がある。つまり、家が用意できないと結婚できないとも言える。これは中国で古くから続く伝統文化のように思われているが、実は2000年代中盤以降に作られた慣習だと、北京在住のライター、斎藤淳子は指摘している。不動産バブルが続くなか、多くの中国人が不動産さえあれば一生安泰という意識を持つようになり、家持ちの男と結婚すれば老後の不安が消えるという意識になったのだろう。

 同時に、両親にしてみれば、子ども夫婦のマンションを購入するかわりに老後の生活のサポートをしてもらうという動機も存在する。両親だけではなく祖父母も、値上がりを続けるマンション購入のための金銭的援助を惜しまない。このような社会的な意識を背景に、男子の人口比率が多い地域では、少ない地域に比べてマンション価格の上昇度がより大きいことを示した実証研究さえ存在する。