「外国人はいなきゃいけない存在になっている。クルド人の解体業者は百何十社あって、毎日関東で500~600件、仕事をやっている。それが1週間、1か月、なくなったらどうなる。関東の経済に影響する」

 在留期間20年になるクルド人男性のBさん。彼が「不法残留者を送還するべき」という考え方に反対する理由とは? 移民問題に詳しいジャーナリストの三好範英の新刊『移民リスク』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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 ただ、不法残留者を送還するべき、という考え方には語気を強めて反発した。

「外国人はいなきゃいけない存在になっている。クルド人の解体業者は百何十社あって、毎日関東で500~600件、仕事をやっている。それが1週間、1か月、なくなったらどうなる。関東の経済に影響する」

「5、6年前に茨城県牛久市の『東日本入国管理センター』に収容されている仲間が倒れ、病院に運ばれた。LINEグループとか作っているから、一声かけたら車百何十台が集まり、茨城県の病院に向かった。圧力をかけて仲間は仮放免になった」

高級外車を乗り回し「炎上」

 こうしたやり方は、トルコ大使館前の乱闘や、川口市立医療センター前の騒ぎを想起させる。「日本人の反感を買います」と言うと、「日本人には、おかしい、危ない人たちと思われるだろうけど、これだけ地盤、家族もあって、はいあなた強制送還です、と言われたらギリギリのところでは、僕たちも動かなければならない」と、目的のためには手段は正当化されるという考えだった。

「入管の人間を3回殴ったことがある。血だらけにしたこともある。捕まったことはないが」と物騒なことも言った。

 トルコに送還されると、政治的迫害を受けるというのはどの程度当てはまるのか。