岩手県大船渡市の山林火災で、東日本大震災からの復興を遂げた水産会社が再び大きな打撃を受けた。養殖アワビ約250万個が全滅し、被害額は約5億円に上る。しかし、社長の古川季宏さんは「会社を復興させる」と前を向いている。震災と火災・2度目の苦難に立ち向かい、再び「三陸翡翠あわび」を多くの人に届けるため、復興への道のりが始まっている。
養殖アワビ250万個が全滅
「緊急用の資金はもちろんあるけど、せいぜい半年くらいで枯渇すると思う」と話すのは、水産加工会社、元正榮 北日本水産の社長・古川季宏さんだ。
大船渡市三陸町でアワビの陸上養殖を手掛けている。
古川さんは3月11日、視察に訪れた市や県などの職員に会社の現状を説明していた。
古川さんは「うちのアワビが全滅という形になっている。一部生きているものもあるが生後数カ月のもの。すぐに売り上げになるものは、ほとんど存在しない」と語った。
2月26日、市内で発生した大規模な山林火災で、古川さんの会社がある三陸町綾里は160棟余りの建物が焼けるなど被害が特に大きい場所だった。
停電で海水循環停止、被害額5億円
このためアワビの養殖場がある施設では資材置き場の倉庫や海水をくみ上げるポンプなどが焼けた。
さらに停電も重なり、いけすに海水を循環させることができなくなったことで、死んだアワビの数は約250万個。被害額は約5億円に上ると見込まれている。
支援制度の検討に入るのを前に、11日は養殖場の視察が行われ、市の職員などはいけすの中や施設の焼けた部分を見て回り被害の状況を確認していた。
震災から14年、2度目の試練
11日は東日本大震災から14年の日。古川さんはこの町を襲った2つの災害を重ね合わせていた。
古川さんは「14年早いなという部分と今回火災で(震災当時と)同じ状況に戻ったという感じもあり、私自身かなり複雑な思いもある」と語った。
約40年前、古川さんの父親の代から作り上げた養殖施設は東日本大震災による津波の被害を受け全壊した。