古代エジプト文明は常に世界中の人々を魅了してきた。日本人もご多分に漏れず、古代エジプトに強い関心を抱いている。今年は「ラムセス大王展」(9月7日まで、豊洲「CREVIA BASE Tokyo」にて)、「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」(11月30日まで全国会場を巡回)など注目の展覧会が目白押しだ。一方エジプトでも、単一の古代文明を扱う博物館としては世界最大となる大エジプト博物館がまもなく正式開館予定である。
では、なぜ人はこれほどまでに古代エジプト文明に魅了されるのだろうか。約4500年前に造営された巨大なピラミッドの謎、ほぼ未盗掘で発見されたツタンカーメン王墓から出土した極めて洗練された技術を示す副葬品の数々、数千年の間残された歴代のファラオのミイラ、世界最古の文字の一つヒエログリフ(聖刻文字)など、その理由は枚挙にいとまがない。
だが、古代エジプト文明は日本人にとって、時間的にも空間的にもあまりにも遠い存在だ。魅せられる理由を探るためにはその研究史を紐解く必要がある。
古代エジプト文明が学術研究の対象となった嚆矢は、1798年のナポレオンのエジプト遠征である。この時、175名余りの学者らからなる調査団が同行。ロゼッタ・ストーンが発見され、その後フランスのシャンポリオンによってヒエログリフが解読された。
遠征から約60年後、おそらく史上初めてエジプトを訪れた日本人が、福澤諭吉も参加した1862年(文久2年)の第一回遣欧使節団である。その翌年には第二回使節団もエジプトを訪問。ギザの大ピラミッドと大スフィンクスの前で記念撮影をしたことで知られる。

その後、日本考古学を確立した京都大学の濱田耕作は1913〜1916年にヨーロッパに遊学し、イギリスでエジプト考古学の父フリンダース・ピートリのもとで考古学を学んだ。のちに京大総長となった濱田はピートリのエジプトでの発掘調査に財政的な支援を行い、見返りとして京大に出土品が寄贈された。
この出土品に触発され、日本で最初にエジプト学を研究したのは奈良女子高等師範学校(現奈良女子大学)で教授を務めた岡島誠太郎である。彼は日本で最初の古代エジプトの通史や、古代エジプト語の事典などを記した。
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