それは5月20日のお昼過ぎのことだった。とある学校に講義に向かう途中、助手席に座っている側衛に「宮務官からです」と電話を換わられた。受けると、「今朝大村先生がトルコのご自宅で亡くなられたそうです」と言われた。側衛に電話を返しながら、「大村先生が亡くなられたって……先月お会いしたのに……これからトルコ……どうなるんだろう……」文章にならない言葉が口からあふれ出る。脳が事態を理解することを止めたまま、私は講義に向かうことになったのだった。

大村幸弘(さちひろ)先生は、トルコ中部のカマン・カレホユック遺跡の発掘調査に40年の長きに亙り、携わってこられた考古学者。中近東文化センターの理事長であり、アナトリア考古学研究所名誉所長であった方である。古代アナトリアで、史料がほとんど見つからないことから「暗黒時代」と言われていたヒッタイト帝国滅亡後の地層から、人類の生活の痕跡を発見したり、製鉄技術の誕生の歴史が大きく遡るかもしれないという遺物を発見したりと、考古学界が揺れるような功績を度々挙げられてきた。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年8月号

