昭和天皇の末弟で、オリエント史の研究者としても知られた三笠宮崇仁(たかひと)親王殿下(1915〜2016)。孫で、日本美術の研究者の彬子女王殿下が、ご功績と“おじいちゃま”の素顔を語る。
私が「おじいちゃま」とお呼びしていた三笠宮殿下は様々な分野で多彩にご活躍されましたが、恐らく多くの方がご存じなのが歴史学者としてのご研究ではないでしょうか。
殿下は東京大学文学部の研究生として、歴史を学ばれました。オリエント史を専攻し、日本オリエント学会を創設。会長を務められました。
東京女子大学の講師に就任(昭和30年。以下、( )内編集部)されましたが、最初の授業の際には、立ち見が出るほど学生たちが詰めかけたそうです。ですが、殿下が黒板いっぱいにヘブライ語を書かれたところ、次の授業からは学生たちが恐れをなして、減ってしまったそうです(笑)。それだけ情熱をもって、教育に取り組まれていたということでしょう。後に三鷹市に中近東文化センターも設立されますが、場所の選定からスポンサー探しまで、ご自身でなさったそうです。
私も学習院初等科の頃から歴史が好きでしたが、殿下の影響があったのは間違いありません。実は父(寛仁〔ともひと〕親王殿下)も歴史がお好きで、食卓でもよく歴史の話をされていました。自分で調べることの大切さも、殿下に教えていただきました。殿下の御足跡をまとめた『三笠宮崇仁親王』(吉川弘文館、令和4年)でも紹介しましたが、アヒルと、カモの仲間のバリケンの混血で、ドバンという鳥がいます。決して奇麗な模様ではないのですが、初等科の時に存在を知り、「なんでこんな柄なのだろう」と不思議に思い、殿下にお尋ねしました。すると百科事典や図鑑など複数の資料を見せてくださり、「この本にはこう、こちらの本にはこう書いてある」と、説明してくださいました。
宮邸に伺った際、しばしば疑問に思ったことをお尋ねしましたが、殿下はいつも、断定的におっしゃることはありませんでした。今考えると、世の中には様々な資料があり、その中から自分で考えて答えを見つけることが大事なのだということを伝えようとされていたのだと思います。知らず知らず、研究者としての種を蒔いていただいていたのです。
その後も、折に触れて研究の後押しをしてくださいました。学習院大学文学部史学科の4年生で、スコットランドの伝統的な織物であるタータンについて卒業論文を書いた時のことです。中近東文化センターから研究会で卒論の内容を発表してほしいと依頼があり、発表時には複数の参加者の方から質問を受けました。
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