ミア・ゴスのゴスは、ゴシック・ホラーのゴス。少し前まで、私はこんな独り言をつぶやいていた。Gothの名前がGothicに由来すると思ったからだ。

　だが、ちがった。カナダ出身の父親が、ゴスという苗字だったのだ。偶然とはいえ、凄い名前ではないか。母親はブラジル出身で、ミア・ゴスはロンドンで生まれた。生後2週間でブラジルへ渡り、5歳で英国、10歳でカナダと転居を繰り返し、12歳以降はロンドン南西部に居を定めた。父親との同居期間はきわめて短い。困難な時期だった、と本人が英国の新聞記事で述べている。

　スターになってからさほど長い時間が経っていない俳優なので、生い立ちをかいつまんで説明した。

　いまや、映画好きでミア・ゴスの名を知らぬ者はいない。名前を聞いただけで出演作を見逃さない人も少なくない。

　とくに『X　エックス』、『Pearl　パール』（ともに2022）、『MaXXXine　マキシーン』（2024）と連打された3部作の突破力と破壊力は図抜けていた。ホラー映画の衣をかぶってはいるものの、近年では出色のブレッド＆バター・ムービー（基本的な娯楽映画）と呼んで差し支えないだろう。監督は3本ともタイ・ウェスト。映画的快楽が山盛りだ。

　最初に公開された『エックス』は、1979年のテキサス州を舞台にした映画だ。6人組の若い男女が農場の離れを借り、ポルノ映画を自主製作しようとしている。ミア・ゴスの演じるマキシーンは、製作者の女友達だ。あとは主演の男女優、撮影兼監督の若者と録音係の娘。

　だが、彼らの借りた農場の主は、殺人鬼の老夫婦ハワードとパールだった。裏手の沼には人食いワニも棲息している。いうまでもないが、撮影クルーはつぎつぎと夫婦の毒牙にかかる。

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