軽く振って飛ばしたい

第7回 清水和夫・イワタヤ代表取締役社長

清水 和夫 イワタヤ代表取締役社長
エンタメ スポーツ

政財界に隠れファン多数。老舗ゴルフショップがシニア用クラブを開発した理由

 年を取ると飛距離が落ちるのは、誰もが突き当たる壁です。30年以上前の話ですけど、ソニーの井深大さんもそうでした。私どものお客様で、大のゴルフ好きでしたが、70歳を超えてからはどうにも飛距離が出ないという。井深さんに「楽に飛ばせるクラブはないの?」と尋ねられたのが、当社がシニア用クラブを開発したきっかけなんです。

清水和夫さん Ⓒ文藝春秋

 もともとイワタヤは一介のゴルフショップでした。紆余曲折あって私が先代社長から引き継いだのですが、当時からゴルフは大人気のスポーツでね。東京・丸の内の店舗に、商社マンになりたての新入社員がボーナス払いでセットを買いに来る、そんな時代でした。ピンやウィルソン、スポルディングなど、外国製の高級クラブが飛ぶように売れたんですね。

イワタヤ本店 Ⓒ文藝春秋

 政財界のお客様も多かった。興銀の頭取だった正宗猪早夫さんや富士ゼロックスの小林陽太郎さん、大洋漁業の中部新次郎さんなど数え上げたらキリがありません。皆さん「飛ばなくなった」という。

清水和夫さん Ⓒ文藝春秋

 そもそも当時の外国製クラブは日本人の身体に合わないものが多かったんですよね。背の高い欧米人の体格に合わせて作られていたんです。国産クラブもそれに倣ってアスリート志向だったりする。“飛ばし屋”ジャンボ尾崎の全盛期でしたしね。いずれにしても、年配のゴルファーにはオーバースペックなんです。

最新のドライバーやユーティリティ型のアイアンセット ©文藝春秋

 それで私が一念発起して、シニア用のクラブ「イージーパワー」を開発したわけです。開発を始めたのは1995年。横浜ゴムに生産ラインを借りる形で「PRGR(プロギア)」の立ち上げに携わった斉藤真吉さんとともにクラブ作りをしました。コンセプトは「スプーン(3番ウッド)よりやさしいドライバー」。シャフトには軟らかい素材を使い、薄型シャローヘッドに13度のロフト。これならスイングスピードが出ないシニアでも高く打ち出せるので飛距離が伸びます。私はこれを「FD(フェアウェイドライバー)」と名付けました。その後、全番手がユーティリティ形状というアイアンを開発したり、とにかく「軽く振って飛ばす」ことを追求し続けています。それは今でも変わりません。

FD(フェアウェイドライバー) Ⓒ文藝春秋

 私が一番よかったなと思っているのは、「シニア向け」と堂々と銘打ったところですね。誰でも若い頃と同じようにはいきません。でも、それを隠すことはないと思うんですね。年を重ねても楽しめるのがゴルフの素晴らしさですから。

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source : 文藝春秋 2025年9月号

genre : エンタメ スポーツ