不倫をめぐる冒険

第11回

山田 詠美 作家
エンタメ 社会 読書

 耳にするたび目にするたびに反感を覚えて舌打ちをしたくなる、私が大の苦手とする言葉。それが「不倫」。野放図な恋愛関係を数多く描いて小説に仕立てて来た私であるが、「不倫」という言葉を使うのを極力避けて来た。倫理にあらずって誰が決めるんだよう、とむずかったり、あらがったり。

 しかーし! ここ数年は、無駄な抵抗は止めて、あっさり使うことにしたのである。だって、その種のゴシップの数が多過ぎて、いちいち説明していると追い付かないんだもん。そういう時に、まず「不倫」という言葉を使って置くと概要が解るというか。本来、作家は概要でものを語ってはいけない……とは思うが……いいの、いいの、自分の小説内でなければ。

 そんなふうに開き直ると、世の中の不倫事案は、すごく興味深くておもしろいのである。でも、ジャッジはしない。それが野次馬の流儀である。こんなことに「流儀」なんて言葉を使ったら、「大人の流儀」シリーズを出した故・伊集院静氏は、さぞかし御機嫌斜めになることだろう。いや、「女子供は許す」とおっしゃるかなー。あの言い回しにいちいち突っ込んでいたの私だけだったみたいだけど。

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source : 文藝春秋 2025年9月号

genre : エンタメ 社会 読書