物理学のラスボスに挑む

第18回

大栗 博司 物理学者
ビジネス サイエンス 教育

 第14回は、カリフォルニア工科大学の大学史編纂担当の歴史学者からインタビューを受けているという話から始めました。インタビューのやり取りがおもしろかったようで、歴史学者は、執筆中の大学史の一章を割いて、私の研究についても紹介してくださることになりました。

 私の研究テーマのひとつは「一般相対性理論と量子力学の統一」です。大学史の原稿を読むと、「この理論はいつごろ完成するか」、また「実験による検証はどのくらい先になるのか」という質問に、私が答えるところが引用されていました。

 この質問に答えるためには、まず物理学がどのような学問かを説明する必要があります。

 科学の分野の中でも、医学や天文学は3000年以上前からエジプトやメソポタミア、中国、インドなど世界各地で発達してきました。

 これに対し、物理学が学問としての形を成したのは今から約400年前のガリレオ・ガリレイやアイザック・ニュートンの時代です。その特徴は、基本法則を発見し、それを使ってさまざまな現象を説明するという方法にあります。どのような現象であっても、基本法則にさかのぼって理解することができるのであれば、物理学の対象になるのです。

 高校時代に物理学を選択された方は、物理学とは台車が斜面を上がり下がりするような「物体の運動」を研究する学問だという印象をお持ちかもしれません。確かに物理学はガリレオやニュートンによる運動の研究から始まりました。

 しかし物理学の研究対象は物体の運動だけではありません。

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source : 文藝春秋 2025年10月号

genre : ビジネス サイエンス 教育