
今年8月より、カリフォルニア工科大学の物理学・数学・天文学部門の部門長を拝命しました。
同大学では歴史的な理由で部門長という名称ですが、他大学の理学部長に相当します。米国の大学では理学部の下に数学科や物理学科などがあり、それぞれに学科長がいます。学部長は大学の運営に携わる立場で、学科長が教授の代表として学部長と交渉する構造になっています。
日本の大学では教授会が強い権限を持ち、教授人事を含む重要事項も教授会の決定に委ねられています。これに対し、カリフォルニア工科大学では、学長、プロボスト(学務担当主席副学長)、そして6名の部門長(学部長)からなる評議会が、学務に関する決定権を担っています。教授会は助言機関にとどまり、その意見が評議会で覆されることも珍しくありません。その分、部門長は判断責任を負うことになります。
米国では大学の運営に関する本が数多く出版されており、学部長の職務に特化したものもあります。着任準備のために何冊か読んでみると、どの本にも、自分の権限を理解して、情報を幅広く集め、正しい判断をして、それを効果的に伝えることが重要だと書いてありました。
それはもっともですが、では、そもそも「正しい判断」とは何か。
私が専門とする物理学の研究では、すべてのことを基本原理から導こうとします。しかし、大学の運営に関する判断はそうはいきません。
それを考える上で参考になるかもしれない本を読んだので紹介したいと思います。物理学者の斯波弘行が編集と翻訳をした『カピッツァの手紙』(ふくろう出版)です。
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