ノーベルウィークに考える「2050年の科学技術」
野依 今日ここへ来たのは、編集部から「日本の研究力を再興するために何をすべきか、ノーベル賞受賞者同士で議論してほしい」と声をかけられたからです。でも、その前に企画書にあったテーマに物申したい。ここには「今後30年で10個、ノーベル賞をとるために日本は何をすべきか」とありますが、ぱっと見て、おいおい、『文藝春秋』ともあろう伝統ある雑誌がその程度の見識でいいのかと、苦言を呈したくなった。
梶田 私も同感です。
野依 ノーベル化学賞受賞後の会見で、「ノーベル賞の数値目標は不見識だ」と言ったこともありましたが、「とる」という表現もよくありません。ノーベル賞をはじめとする顕彰は、財団など主催組織が主体的に選考して研究者たちに授けるもの。オリンピックの金メダルのように決められた種目について、競技者たちが互いに優劣を競って獲得するものではない。
芸術などと同様、新しい価値の創出を目指す科学研究という営みに対して、競争主義、数値目標や経済論理を無理矢理押しつけることはあってはならないことです。
――大変失礼しました。
吉野 まあまあ、きっと編集部はわかりやすいフレーズを読者に供したいと考えたのでしょう。せっかくこうしてお二人にお目にかかれたのですから、私は今後、日本の科学技術をどう立て直せば良いか、しっかりお話ししたいと思います。日本の研究力が危機に瀕しているのは事実ですから。
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source : 文藝春秋 2025年11月号

