理工系学部「女子枠」の是非

第12回

大栗 博司 物理学者
ビジネス サイエンス 教育

 今年は年明け早々、アラブ首長国連邦の首都アブダビで開催された国際会議「ストリングス2025」に出席しました。

 この連載の昨年9月号でも書きましたが、ストリングス会議は私の研究分野である超弦理論の最も重要な会議で、全世界から500名程度の研究者が集まります。アラブ世界での開催は今回が初めてでした。

 アブダビには米国ニューヨーク大学の分校があり、超弦理論の研究グループもあります。会議開催が提案されたのは2年前でしたが、そのときには反対意見がありました。

 アラブ首長国連邦では同性愛が違法とされているからです。実際にこの法律で逮捕や起訴をされた例はほとんど知られていないそうですが、この法律のために一部の研究者が会議に参加できなくなるのは、人権問題ではないかとの懸念が表明されました。

 実は、ストリングス会議にはこれまで開催地を選定する委員会はありませんでした。しかし、このような問題が起きると、開催候補地について調査と議論をして判断のできる委員会が必要になり、私も委員として参加することになりました。

 委員会で開催候補地を議論するにあたって、まず確認されたのは、「考慮すべきは参加者の安心と安全であって、開催国の政治的立場は問題にしない」という原則でした。

 今日のように分断された国際社会で、開催国の政治的立場を問題にすると、国際会議を開くことは困難になります。米国内ですら、妊娠中絶を違法とする州でアメリカ物理学会の会議を開くべきかが問題になったことがあります。そのときも、物理学会は「開催州の政治的立場は問題にしない」という判断をしました。

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source : 文藝春秋 2025年4月号

genre : ビジネス サイエンス 教育