「これは極めて重いな」

　経団連の会長に就任して約1カ月が経った今年7月、第一報を聞いて、そう直感しました。日本生命の社員が、出向先の金融機関から内部情報を無断で持ち出した問題です。

　今回の件で、お客様と社会にご迷惑をおかけしたことは、大変申し訳なく思っています。出向先で日常的に接していた資料とはいえ、無断で持ち出したことは、不正競争防止法の趣旨に照らして不適切であったと言わざるをえません。

　調査の結果、不適切な手段での情報取得は2019年からの6年間で、約600件にのぼりました。私が日本生命の会長になったのは2018年ですから、会長時代も行われていたことになる。

　無論、持ち出しを指示したことはありませんが、不覚にも把握できなかったことは重く受け止めなければならない。少なくとも6年間は担当者が替わっても受け継がれ、金融機関を担当する役員にも資料が共有されていたのに、誰も中止を検討しなかった。ガバナンス上の問題は深刻だと自覚しています。

　教訓とすべきは、2005年に日本生命を含む保険各社で発覚した不払い問題です。保険金はお客様からの請求を基に支払いますが、保険会社からの案内が不足しており、お客様が支払事由に気づかなかった。結果的に、保険金や給付金が支払われていなかったことで社会的な批判を浴び、金融庁から行政処分を受けました。

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3. 筒井義信「経団連会長就任直後の重たい知らせ」