「働き方改革」が日本をダメにする

仕事を制限することは幸福を制限することだ

ビジネス 働き方
丹羽宇一郎氏  ©文藝春秋

 仕事とは、すなわち人生そのもの――私は半世紀以上、この信念でやってきました。そしてそれは今も間違った考えだとは思っていません。

 仕事には喜びも哀しみも、汗も涙も詰まっています。ときには上司から「このバカ野郎!」と叱責されることもあるでしょう。そうした厳しい経験を通じて自分をコントロールし、相手に意思をはっきり伝える交渉力を身に付ける。失敗もあるでしょうが、成功したときには大きな喜びを手にすることができます。

 激しく仕事をした人間は大きく成長します。でも中途半端な仕事をしていたら人は成長しない――だから意欲のある人間は、何時間でも働いたらいいと思います。それは会社のためだけではなく、その人のためでもあるからです。

 4月から順次施行された働き方改革関連法には心底、失望させられました。1947年の労働基準法の制定から70年ぶりとなる大改革ですから、当初は大いに期待していました。ところがフタを開けてみれば、誰のために作ったのかわからないような法律ばかりが並んでいる。

 これからの50年、100年は、AIの進化やロボット技術の発展によって仕事のあり方そのものが大きく変化するでしょう。その中で人口減少社会に突入している日本は、1人ひとりの生産性を高めていかなければなりません。過労死の防止など、長時間労働に伴う問題を解決することは大切ですが、働きやすい環境を作って労働者の意欲を高めることが喫緊の課題なのです。

 働き方改革は仕事のあり方、ひいては国民の人生を決定付けるほど重要なのに、それを理解した上で作られた法律だとはとても思えません。

勤労意欲が奪われる

 今回の改革で最も重視されているのが、長時間労働の是正です。残業時間の上限規制や年次有給休暇の取得義務がはじめて法律に明記されました。違反をした場合には、企業名の公表や刑事罰などが科される可能性もあります。

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source : 文藝春秋 2019年6月号

genre : ビジネス 働き方