『天使も踏むを畏れるところ』松家仁之/新潮社
『戦争みたいな味がする』グレイス・M・チョー/集英社
『編むことは力』ロレッタ・ナポリオーニ/岩波書店
まっ先に挙げたいのが、上下巻合わせて1000ページを超える長編小説『天使も踏むを畏れるところ』。物語の舞台は1950〜60年代、空襲で焼け落ちた明治宮殿の跡地に新宮殿を造営する一大プロジェクトが組まれることになった。新宮殿の設計者に選ばれた建築家・村井俊輔は、戦後日本における民主主義と1000年の伝統をもつ皇室の共存を懸命に模索するのだが、その姿は、敗戦後の日本人が精神を「建築」する道のりに重なってみえる。いっぽう、国側の役人は権限を振りかざして村井の前に立ちはだかる。両者の価値観の対立は、国家や個人観、歴史観、自然観にまで及ぶものだ。建設技官、美智子妃の話し相手を務める園芸家、侍従、そして昭和天皇と皇后が肉声を発しながら、しだいに新宮殿が実体をともない始める。本書の構想と執筆のために収集された膨大な史料とフィクションの融合が、歴史の波間から日本と日本人の姿を浮かび上がらせて圧倒的な読み応えだ。

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