激変する国際情勢と世界経済を、第一次トランプ政権の大統領副補佐官・ポッティンジャー氏が徹底分析
■連載 投資家のためのディープな地経学
第3回 「習近平失脚」デマはなぜ流れたか
第5回 同盟を強化する中国にトランプは対抗できるか
第6回 「サナエとドナルド」の連携で中国の影響力を打破せよ
第7回 ←今回はこちら
10月下旬、中国政府は、習近平国家主席が中国経済をこれまで以上に外部から切り離そうとしていることを示す重要文書を公表しました。
今回公開されたのは、中国共産党中央委員会がまとめた正式な「建議書」と、習氏自身による「説明書」の2点です。いずれも来春に発表予定の第15次五カ年計画の方向性を先取りする内容となっています。
2020年の第14次五カ年計画の提案と比べると、注目すべき大きな違いがいくつも見られます。
まず習近平政権下では初めて、「国家安全・軍の近代化」と「技術面での自立」が五カ年計画の「主要目標」として掲げられました。
自立性と安全保障にいっそう重心を移したことは、最先端技術の主導権を握り、中国の貿易相手国に対する影響力を一段と強めたいという習氏の意図を明確に示しています。

また文書からは、習氏が長年続けてきた反腐敗闘争をさらに強化する姿勢もうかがえます。最近では金融監督当局幹部の粛清が発表されたほか、習氏側近の蔡奇氏が『人民日報』に強烈な反腐敗論文を掲載したことも、その一例と言えるでしょう。注目されるのは、習氏が「説明書」のなかで、大規模な需要刺激策の可能性を否定し、「中国経済の基礎は盤石である」と強調した点です。これは、景気刺激や民間企業支援よりも、「大国」(主に米国、そして日本も含まれます)との競争に備え、中国経済の強靭化を最優先課題として据えていることを示唆しています。
大国間競争を経済戦略の中心に
今回の「建議書」と「説明書」は、2026年3月の全国人民代表大会で正式承認される見通しの第15次五カ年計画の基盤を形づくるものであり、次期産業ロードマップとして位置づけられます。日本として懸念されるのは、今回の提案が、2024年の第3回全体会議で強調された「大国間競争」を経済戦略の中心に据えている点です。
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