12月16日、高市政権は2025年度補正予算が成立させた。その規模は18兆円。コロナ禍を除いて過去最大となった。「責任ある積極財政」を掲げ、高い支持率が続く高市早苗政権だが、国民は何かを見逃していないか――。元自衛官で、芥川賞作家の砂川文次氏が、「文藝春秋PLUS」に特別寄稿した。
「デフレ脱却」を目指し続ける日本
ここ数年、物価高騰ということばを耳にしない日はない。
コメに限らず乳製品や肉や魚や野菜の値段は日々上昇し、また動画配信やクラウドサービスなどの価格もしっかりと上がっているのを生活の中でひしひしと感じる。
実際、これはわたしひとりの体感などではなく2025年2月に内閣府が公表した「日本経済レポート」にもはっきりと「国内物価の上昇が始まった」と明記されている(※1)ことからも知れる。ここで改めてアメリカや欧州のインフレ率を引くことまではしないが、物価高騰はいまやある程度常態化した現象といってよく、また同時に各国はこの粘着性のインフレとその再加速を警戒しながら難しい経済のかじ取りを行っている。
そんな中、2025年11月の衆議院予算委員会で高市早苗首相がデフレ脱却の宣言発出を「目指す」と答弁したのには首を傾げざるを得ないが、先に挙げた「日本経済レポート」には物価上昇を認識する文言と同時に、こちらの方でもやはり「デフレ脱却」の文字も連なっており、どころか「物価・賃金の動向とデフレ脱却に向けた現在地」という一節がわざわざ設けられていることに加え、これが公表されたのは高市首相就任前であることからもこうした現状認識と姿勢は件の総理が誕生するよりも前から連綿と続いてきたものであることが窺える。

インフレが物価の上昇を、デフレがその下落を指すことに異論はないだろうが、実は「デフレ脱却」には別の定義が用意されており、前記レポートでは下記のように説明されている。
「2006年3月に参議院予算委員会に提出した『デフレ脱却の定義と判断』において、『物価が持続的に下落する状況』を『デフレ』と定義し、また、『物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと』を『デフレ脱却』と定義している」
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