どんな未来になっても

わたしのベスト3

角田 光代 作家
エンタメ 読書
作家の角田光代さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。
角田さんver1
 

 子どものころに第2次世界大戦を経験した開高健は、戦争とは何か、戦争を起こす人間とは何であるのかを、身をもって知ろうとした作家だと思う。『輝ける闇』でも『歩く影たち』でもいいのだけれど、『戦場の博物誌』を選んだのは、ここに「玉、砕ける」が収録されているからだ。

 概念や論理ではなくて、生々しく具体的に、人間と戦争の姿を、ここにおさめられた作品は捉えていると私は思うのである。なんとなく、この先、開高健みたいな独特の癖のある文章は、読まれなくなっていくのではないかと懸念している(実際彼のある著作は一度絶版になり、2018年に復刊している)。読み継がれていかねばならない作家であり、小説だと思う。

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source : 文藝春秋 2020年1月号

genre : エンタメ 読書